CWOの前川が綴るコラム-現場からの「協働革新」 2020年3月23日

コロナワーク騒動(現在進行中)

コロナワーク騒動(現在進行中)

前回ブログを更新した1月の時点では、まさか新型コロナがこんな世界的な大問題になるなんて思わなかった。僕も最初は「単なる新しい種類の風邪だろ、そんな騒ぐことないぜ」と言っていたのに、今となっては、あまりの影響の大きさに戸惑い、先行きに対する不安を思いきり感じている次第である。

ちなみに3月生まれの娘は、幼稚園のお誕生日会が中止されたことが何としても納得がいかないようで大層ご立腹の様子であるし、今月予定されていた姪っ子の結婚式は昨年の台風直撃に続いてまたも延期となり、姪っ子は「これは結婚するなというサインなのか?」と嘆いている。

当然ながら我が社でも、社員から感染者が出た場合の影響度合いを考え、政府の要請が出た時点から勤務形態を急遽テレワーク主体に切り替えざるを得ない事態となった。

このような事態を予期していた訳でもないのだが、我が社の場合は運良く、テレワークの土台となる仕組みや制度ができたタイミングであったため、比較的混乱は少なかった方だと思う。

全社的な仕組み
  • ちょうど今年の2月から全社員を対象にフレックス制度を導入していたので、時差出勤などもフレックス制度を微調整することで対応することができた。
  • 商売柄、VPNやパソコンの管理などテレワークに必要なインフラは整備されており運用体制も確立されていた。協力会社の方々に対するプラスの対応は必要であったが大きな混乱はなかった。
  • 去年の12月から社内コミュニケーションの中心をTeamsに移行していたので、通常時から東京/広島/沖縄/大連の拠点間を中心にTeamsを使用したビデオ会議が普通に使われていた。
  • 自社製品である「INSUITE」の社内ポータルおよび連絡通知機能を使用しているので、情報を伝達する手段や運用体制は十分に確立されていた。
製品開発部の取り組み
  • 通常時からGitHUBを使用したチケット・ドリブンのチーム開発を行なっているので、テレワークに移行しても開発状況の把握や課題管理などの問題は特になかった。
  • 開発のメンバーは何か足りないことがあれば自分たちで対応できる人たちなので、基本的には開発業務が大きく滞ることはないだろう。
営業部の取り組み
  • 昨年からベルフェイスを利用した非訪問の営業にも取り組んでいたので、訪問できない場合でもベルフェイスを利用してお客さんと会話することができた。
  • 日々の営業活動におけるレポートは「SmartDB」を使用した運用が確立されているので、特に活動報告の方法を変更する必要はなかった。
  • 営業の進捗管理や課題管理はSalesforceで共有されているので、管理面で通常のオペレーションを変更する必要はなかった。
サービス部の取り組み
  • 通常時から進捗管理や課題管理などは、Backlogを利用してお客さんを含めたプロジェクトのメンバーと共有しているので、テレワークでも特に混乱が生じることはなかった。
  • 協力会社の人たちについては各会社と調整しなければならないこともあったが、大きな混乱もなく対応してくれたと思う。
業務管理部の取り組み
  • 前回のブログで紹介した通り、昨年から地道に各取引先へのお願いを続け、押印が必要な書類はクラウドサインを利用してほぼ電子化できたタイミングだったので、押印のために出社するようなことは必要なかった。
  • 支払業務等についても、インフォマートを使用して電子化されているので、経理のメンバーも全員テレワークを実施することができた。
  • 今回は日々状況が変化したので、我が社でも対応方針が若干ぶれたりすることもあったが、その都度「INSUITE」を利用して社員に状況や情報を共有することができた。
  • 実際に全社員がテレワークの対象となった結果、浮き上がった問題もあったが、現場で自律的な対応ができたと思う。一つの例として、誰がテレワークしているのか分からなくなる問題について、現場で以下のような対応を行なった。

誰がテレワークしているのか分からなくなる問題の対策例

当初、テレワークをする人は各自でOutlookの予定にテレワークの実施時間を登録するということにしたのだが、Outlookでは他の人の予定をパッと確認しにくい状況だった。そのため、各部のTeamsに「テレワーク確認」みたいなチャネルが乱立したり、それぞれの部門でOneDrive上のExcelで予定を共有したりするようになった。結局、誰がテレワークしているのかよく分からなくなってしまい、オフィスで電話を受けた人が対応に苦慮するようなことが多発するようになったのである。

そこで、各自がテレワークの実施時間を登録して全社で共有する以下のようなバインダを人事部がSmartDBで作成した。このバインダに登録されたテレワークの実施時間は、Outlookにも予定として自動登録される仕掛けである。

すべてを事前に予測して準備しておくことは不可能なので、いざとなったときには、現場で自律的に対策前進するための武器が必要である。我が社では、これらの武器を駆使して、僕も知らないところで各部が自律的な工夫をして対策前進しているものと思われる。

しかし、新しい対策を一つ実施するにしても、管理側と現場で本来の目的意識がちょっとズレることで、本質から外れた枝葉の議論が勃発すると、現場に必要以上の負担をかけることになるケースは、これまでにもよく経験したことである。情報を発信する側は、単に事務的な手続きを共有するだけでなく、実施される対策の目的や方針の真意をしかるべき相手にしっかり共有しようとする意識が必要であり、それを実現できる伝達手段も同時に必要であると思う。

今回の騒動では、特に人事・総務の方々は様々な対応に奔走されたことだろう。「そんなことぐらい現場で考えて適切に対応してくれよ?」という声も聞こえてきそうだが、日々変化する状況に対応したトップの方針表明を含めて、根本的な意識共有なしに現場での適切な判断を求めるのも少し無理があるだろう。

コミュニケーションの問題については、チーム単位での打ち合わせはTeamsで問題ないし、もう少し大人数が参加する場合はZoomを使用することで、議題がはっきりしている打ち合わせについては、ビデオ会議でもある程度問題なく運用できているとは思う。

ただし、協創をテーマに掲げる我々の会社では、各々のタスクをきっちりやれば会社の業務が成り立つ訳ではなく、基本的には顔を付き合わせて議論したり、ある時には建設的な対立をしたりすることが必要である。また、自分でも意識していないところで聞こえて来たり、目に入ったりすることから発想を広げたり、なんとなく問題や課題を感じるようなことも多い。その面では、いくら画像や音声が良くなったとしても、やはりビデオ会議というのは何とももどかしい。現在の状況が当初の想定より長期化するとなると、何か作戦を考えなければならない。

実際のところ、他の会社ではどういう状況なのだろう?
特に一般的に大企業と言われるような会社においては、我が社と同様に、政府の要請を受けて、出来る限り時差出勤やテレワークを推進しなければならない状況であったと思う。

ただ、そのような大企業においてもテレワークができなかった役割の人たちも多くいらっしゃるはずなので、今回の騒動の振り返りとして、実際には何がテレワークの阻害要因であったかという現場の声を集める調査を行ってみようと思っている。すでに「紙とハンコ」で出社を余儀なくされた、という声は多く耳にしているが、きっと我々の製品・サービスをより良くするためのアイディアに結びつくネタがあるのと思うのである。

何しろ、今回のコロナ騒動を機に、企業での働き方改革が一気に進むことは間違いないと思われ、組織の意識共有を目指すINSUITEや、現場の自律的な対応を可能とするSmartDBなどの我々の製品・サービスが、世の中にお役立ちできる機会がこれまで以上に多くなることは間違いない。

いずれにしても、コロナ騒動が何とか早く収束してくれるのを祈るばかりである。自分自身は昔から健康で抵抗力が強い方なので、ウィルス自体はさほど怖いとは思わないが、コロナの影響で東京オリンピックまで流れる可能性もあるとすると、世界経済に与えるインパクトは甚大すぎて、もはや想像もつかないレベルである。

プロフィール
前川 賢治
株式会社ドリーム・アーツ 取締役 執行役員 兼 CWO(チーフ・ワォ・オフィサー) 前川 賢治(Kenji Maekawa)
  • 大型汎用コンピュータ向けソフトウェア製品の輸入商社である株式会社アシストにおいて、製品開発を担当。 1996年にドリーム・アーツ設立に参画。
  • 本コラムでは、バブル後の大不景気を経て企業体質も健全化に向かっている現在、より現場力を高めるために「人」の「協業」をいかに支援し、革新していくべきかを考えます。

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