DX/デジタル化調査「 ITベンダー依存」の裏話 2022年3月30日

第3回:内製化・市民開発に踏み出す企業。「依存」しているが「自律」したい本音編

ITベンダー依存の裏話 第3回:内製化・市民開発に踏み出す企業。「依存」しているが「自律」したい本音編 

Introduction

みなさんこんにちは。DX/デジタル化調査メンバーの金井です。

2021年11月発表の調査レポート「ITベンダー依存の裏話」第3回。前回は、ITベンダーの選定基準について書きました。
今回はITシステム決裁者の「依存は認識しているが自律したい本音」についてお話しします。みなさん心のうちはやはり「自律したい」のですね。数値とともに見ていきましょう。

1:頼りたいベンダー像は「自律支援」

「あなたが頼りたいベンダー像は?」という質問の回答がこちらです。
「自社の自律を促してくれる(内製支援・教育)」でした。
今まで散々ベンダーとのズブズブ具合を晒してきましたが、ここにきて「本当は自律したい!」ですと?!
私はこの結果を見て驚きました。しかも2位に9ポイントほど差をつけて1位です。

依存を認識するも、「自律したい」というIT決裁者の本音。しかしなかなか思うように自律できないジレンマもあり、その支援さえもベンダーに頼りたい…藁にもすがる思いでしょうか。

お客さまからの生の声で聞こえてくるのが「ちょっとした改修なのにITベンダーに頼むと見積もりが高い」「やたらと時間がかかる」などの改修スピードやコストに関する不満。これをITベンダーに頼らず自分で改修できたらお金もかからずしかも早いのになー、ということでしょう。軽微な改修に、わざわざ見積もりをとって、何ヵ月も割いて改修する時代ではないということですね。
しかし、もっとヤバいITベンダー依存の実態があります。そう、「丸投げ」状態の依存です。自分の会社のシステムの仕様を理解していない、どのようなデータが蓄積されているのかわかっていない。デジタル前提でビジネスが考えられない状況にまで陥った企業さんもいらっしゃいます。ここまでくるとホラーですね。DXしなきゃいけない時に、その手段であるデジタルを握られてしまっているイメージです。そりゃ皆さん自律しないと未来がない、ヤバいと思うでしょう。

【表1:あなたが頼りたいベンダー像】
あなたが頼りたいベンダー像

2:内製化の落とし穴。結局「社内外注」になっていませんか?

さて、「自律」とはさまざまな意味も含まれていますが、自律の一歩として若干ブームになりつつある「システム内製化」はどのくらい進んでいるのかも聞いてみました。
グラフ1は「システム内製化はどの程度進んでいますか」という質問の回答です。実に6割弱の方が内製化を進めており、検討中を含めると75%にのぼりました。内製化そんなに進んでいるのですね!これには驚きました。

【グラフ1:システムの内製化はどの程度進んでいるか】
システムの内製化はどの程度進んでいるか

「内製化」にもパターンがあります

  • エンジニアを大量採用し、設計などの上流工程から構築/テストまで自社で行うエンジニア型の内製化
  • IT部門だけでなく業務部門も含めて全社でデジタル化を実施する内製化

「1」のエンジニアのみによる内製化パターンを目指す企業も多いでしょう。
しかしここに落とし穴があるのです。それは、「結局、社内外注に陥る危険性」です。
ベンダー依存の根幹は「思考停止でベンダーに丸投げ」のマインドです。
外部ベンダーを頼らず社内のエンジニアで内製化が進んだとして、業務をデジタル化したい業務部門の意識は変わるものでしょうか?依頼先は今までと同様に社内のエンジニアなわけで、結局そこも「丸投げ」になるリスクがあるということです。
システムの内製化は、コストの削減、スピーディーな対応、ノウハウの蓄積などさまざまなメリットが挙げられます。
しかし、システムをお願いする側の業務部門のマインドが変化しないことには、今までとなんら変わりません。業務部門も「ビジネスにデジタルを活用する意識」を持たないといけないのです。

「思考停止でベンダーに丸投げ」のマインド

3:内製化の進化版「市民開発」さらにその先をいく「デジタルの民主化」

では「2」の内製化パターンはどうでしょうか。IT部門だけでなく業務部門も開発に参加するというパターンです。ITの専門知識がない業務部門の社員による、ノーコード・ローコードツールを用いたアプリケーション開発のことを「市民開発」と呼びます。
この「市民開発」についてどう思うか聞いてみたところ、64%の方が前向きでした。結構多いですね。時代の流れでしょうか。
テクノロジーの進化もあり、「市民開発」や「デジタルの民主化」への賛同は、今後さらに増えるでしょう。
(ここで「EUC(エンドユーザーコンピューティング)の悪夢の再来だ!!」と嘆いている情報システム部門の方もいらっしゃるかもしれません。このお話は次のコラムで触れようと思います。)

【グラフ2:現場部門が自らデジタル化を進めていくことについてどう思うか】
システムの内製化はどの程度進んでいるか

ドリーム・アーツでは「デジタルの民主化」を推進しています。業務部門が自らの業務をデジタル化することで、デジタル・リテラシーが向上し、変革マインドが芽生える。それがひとりではなくチーム、さらに部署で、最終的には全社に広がり、デジタルのパワーが民主化される=特定の人に限らずデジタルのパワーをだれもが享受できる状態になる。さらに、企業文化も自律的なものに変革している。そんな世界観のことです。「デジタルの民主化」とは単に“だれもが自ら自分の業務をデジタル化できて便利”というものを超えた世界観なのです。「市民開発」とは少しだけ異なるニュアンスが含まれていることをご理解いただけたでしょうか。

実際に市民開発にトライすることで社員のマインド変革を実感しているお客さまがいらっしゃいます。
次にお話しするのは、ドリーム・アーツのノーコード・ローコードツール「SmartDB」を活用して「デジタルの民主化」を体現している従業員1,000名規模のメーカーA社が、全社をあげて「デジタルの民主化」を体現した軌跡です。彼ら自身の生の声でお伝えしましょう。

1. 起点はトップの覚悟。とにかく紙だらけの状態から脱するために

社長が“変革への挑戦”をスローガンに挙げたことが後押しになりました。何事にも代わることに抵抗があるものですが、ペーパーレス化についてトップの思いが強かったこともあり、本格的にワークフローを見直すことができました(情報システム部Tさん)

全社的に変革を起こすには、やはりトップの強い想いと覚悟が必須条件です。

2. なぜ市民開発を選んだのか。情報システム部門の決断

ドリーム・アーツがいう“業務部門が自律的にデジタル化できる”というコンセプトに賛同しました。私たち情報システム部だけが動いてボトルネックになるよりも、業務を変えたいと望む部門が、自ら動けるようになった方がずっと良いと考えたのです(情報システム部Tさん)

彼らのキーワードは「自律」でした。トップの号令を受けて情報システム部門も覚悟を決め、そこから「デジタルの民主化」成功への道を探り始めました。

3. 初めてアプリ開発に挑む人財開発部

紙書類の紛失や対応漏れによるリスクをとにかく減らしたかったのです。プロセスの設計には少し手間取ったが、慣れてくると楽しくなって、そこまで時間をかけずに作ることができました(人財開発部Sさん)

非IT部門がシステムを開発することは、いくらテクノロジーが進化したとしてもいきなりは難しいものです。しっかりトレーニング期間を設けて徐々にシステム構築に必要な知識を身につけていきました。業務を一度分解し、再構築する過程でロジカルな思考が育まれると同時に、今までなにも考えずに行ってきたアナログ業務の「無駄」に気づき始めます。最終的なチェックや権限管理設定に関してはしっかり情報システム部門が関わった状態でリリースします。

4. 情報システム部門はサポートに徹し、俯瞰的な目線で全社展開

業務担当者が取り組む際に、苦手意識を極力減らすようにしています。自由に触れるお試し環境を用意し、まずはやってみることを重視。少しでも改善できれば嬉しいし、モチベーションにもなる。その気持ちがさらに大きな改善につながると思います(情報システム部Tさん)

情報システム部はこのお試し環境のほか、社内トレーニングや相談会の定期開催、汎用的なテンプレートの作成・配布、全体のアプリケーションの可視化などさまざまな施策を準備しました。そして難しい権限設定や他システムの連携、最終チェックなどは情報システム部で徹底的にサポートし、業務部門が安心して自由に開発できるような環境を整えました。

5. 社員のマインドが変わり、組織文化も自律の方向へ

「社員のマインドが変わりつつあることを感じます。自分の業務はどういうプロセスなのかを一旦俯瞰して、実際にデジタル化する。これには教育的な効果があると感じています。一人ひとりがシステム思考を身に付け、自律的な業務改善をすることによって、総合的に企業価値が高まる。そうしたことを見据えてさらに全社に拡大していきたいと思っています(情報システム部Tさん)」

人財開発部、社長室からスタート、その後はバックオフィスにとどまらず、営業、商品部、工場など多くの部門が業務のデジタル化に取り組み、なんと1年で100業務のデジタル化、そして数百万円のコスト削減を達成しました。

業務が効率化されたことやコスト削減は目に見える成果としてもちろん大きいことですが、私が一番素晴らしいなと感じることは「社員のマインドが変わり、組織文化も変わり始めている」というところです。

「社員のマインドが変わり、組織文化も変わり始めている」のマインド

いつも当たり前のように処理をしている紙の業務や、「なんのためにやっているのだろう」と思ってしまう無駄な仕事をこなすよりも、「もっと良くできないかな」「なぜこうなっているのだっけ?」という自律的なマインドを持ち自らの頭で考えることは、VUCAの時代に対応していくには必須の力です。トップの指示を待っている状態では淘汰されてしまうほど世の中は加速しているからです。

「A社だからできるんでしょ?」
そんなことはありません。A社さんも元々は「Theアナログ企業」で、当初は本当に「デジタルの民主化」を実現することができるか不安でした。
しかし覚悟を持って試行錯誤を繰り返し、さまざまなことにトライした結果が今の状態です。
最終的にはみなさんの「覚悟」は必須な要素になりますが、私たちはその覚悟を聞いたら全力で「自律」を支援していきます。一緒に変革していきましょう!

ということで、ITベンダー依存裏話を3回にわたってご紹介してきました。
次は2022年2月に発表した「市民開発調査」の裏話をお届けしようと思います。お楽しみに!

大企業の“ヤバい”ITベンダー依存の実態

大企業の“ヤバい”ITベンダー依存の実態

DX推進の際にパートナーとなるITベンダーに焦点を当て、大企業の「ITシステム決裁者」1,000名を対象に、「ベンダー依存」に関する調査を実施した。大企業がITベンダーとDXを推進する際の重要ポイントを探る。

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プロフィール
金井 優子
株式会社ドリーム・アーツ 社長室 コーポレートマーケティンググループ ゼネラルマネージャー 金井 優子(かない ゆうこ)

大手SIer出身。データ分析・活用をきっかけにシステムエンジニアからマーケティングに職種をチェンジ。現在はコーポレートマーケティング業務で自社のブランディング確立に奮闘中。