CWOの前川が綴るコラム-現場からの「協働革新」 2020年11月24日

業務フローの電子化をめぐる物語

業務フローの電子化をめぐる物語

日本政府にも遅ればせながらデジタル庁が発足することになったが、新型コロナウイルスが未だ収束していない現状において、各企業においても書類や業務フローのデジタル化を急いで進めることが求められており、社内システムの見直しや再整備が急ピッチで進んでいるのであろう。
我々の提供する業務デジタル化クラウド「SmartDB(スマートデービー)」でも、新型コロナウイルス前と比較して検討期間は全体的に短くなり、スピード決裁されるような案件も増えてきている。

勿論、サービスの利用部門がスピード決裁したとしても、検討プロセスのなかで情報システム部のチェックは必要である。最近は利用部門で「SmartDB」の利用を決めていただたいた後で、情報システム部からセキュリティ・チェックシートへの回答を求められるのが普通のパターンになっている。

With/Afterコロナ時代のニューノーマルな働き方を支えるために業務全体をデジタル化することが喫緊の課題である状況においては、すぐに利用を開始できるクラウドサービスのスピード感が重視され、さすがに必要以上に慎重な大企業の情報システム部でも、前例踏襲を理由にクラウドの利用を拒否することはできないという時代の流れだろうか。

企業のセキュリティに関わることなので、サービス提供者としてできるだけ丁寧に対応すべきだと思う一方で、当然ながら各社のセキュリティ・チェックシートにそこまで大きな違いがあるはずもなく、我々としてはすでに金融機関をはじめとする大企業の厳しいセキュリティ・チェックをクリアしてきた実績を元に用意された標準的な回答で確認してもらえれば助かるのになぁと思う気持ちもある。
自社の設定したチェック項目とフォーマットに合わせなければならないという拘りは、さすがに情報システム部らしいところではあるが、サービス提供者である我々は、セキュリティに関してさらに継続的な努力が必要ということでもある。

業務をデジタル化するプロセスにおいては、既存の業務フローを見直した上で、これまでの歴史的経緯で積み重なった無駄な処理を無くすなど、デジタル化と同時に業務の効率化を計るべきだというのは至極真っ当な理屈ではあるが、実際の現場ではそう理想通りにはいかない現実もある。

特に多くの部署を跨がるような業務では、現状の業務フローを変更するための社内調整というものは恐ろしく大変なエネルギーを要することであり、時間的にも人材的にも、ITのスキルを中心に構成されたデジタル化検討プロジェクトのスコープには収まらないという現実もあるのだ。
それでも経営からは急いで紙の文化をデジタル化することが時代の要請であると言われれば、プロジェクト担当者として、まずは目の前の業務フローをそのまま踏襲してデジタル化しようと考えるのも十分理解できることである。

我々としては、いろいろな事情があるなかでも、業務をデジタル化することが次のステップへの土台となるという思いで、必要とされる業務フローを「SmartDB」で再現するお手伝いをするのであるが、我々はカスタマーサクセスを、お客さんの「ITによる業務改革を自ら推進できる自律的な組織コンピテンシーの実現」と定義しているので、現状の業務フローを「SmartDB」で再現する場合においても製品をカスタマイズすることは禁じ手であり、あくまでもSmartDB標準機能の組み合わせで業務フローを実現する必要があるのだ。

かくして「SmartDB」は標準の機能によって現実社会に対応できる柔軟性が売りではあるものの、実際に我々が「SmartDB」の標準機能で実現した業務フローの事例には、実にさまざまな物語が存在するのである。

やむにやまれぬ順番抜かし
  • 急ぎの決裁がなかなか進まないと、現場の担当者が板挟みになって困るので、起案者自身が承認を止めている人の処理をスキップさせた上で、業務フローの後ろに事後承認として移動する機能が必要とのこと。申請書を紙で回す場合はよくあることらしく、これができないと現場の業務が滞ってしまうらしい……
    本来であれば、業務フローをデジタル化することで決裁スピードを上げるのが本筋であろうと思うが、現場としては、やむにやまれぬ最終手段を奪われたくないということなのだろう。
社内の生き字引が決裁権限マスター
  • 社内稟議については、申請の内容と過去の判例を元に、この申請書はだれに回すべきかを判断する稟議の生き字引のような人がいるらしく、すべての稟議は一旦その人に回して後続のフローを設定するようにして欲しいとのこと。
    本来であれば、決裁権限表など社内ルールを明確に定めるのが本筋であろうと思うが、過去の経緯を紐解いてルール化するのはすぐには無理だし、現状のままシステム化するのはAIでもないと到底無理だとのことで、長年慣れ親しんだやり方を急に変えることができない慣性の法則というものだろう。
これでいいのか自動承認
  • 自動承認の機能はを実によく要求される。
    とは言っても自動承認の条件はもさまざまで、一定期間経過したら承認したものと見なすケースとか、3月だけは繁忙期で手が回らないので当該3月分だけは盲印を押せるようにしたケースもあった。
    システムが自動で承認するのなら、そのプロセスは必要ないということじゃないの? と思うのは僕だけだろうか。そもそも証跡としての意味も持たない自動承認は内部統制上問題ではないのか?

などなど……
現場のやむにやまれぬ状況も理解はできるが、同時に我々は現場の要求を盲目的に実装することの危険性についても理解しておかなければならない。

いずれにしても現状の業務フローをデジタル化して止まってしまったのでは、我々の掲げるカスタマーサクセスは実現できない。
これをスタートポイントとして、実際に業務を担当される方々が自ら業務の無駄を排除し、業務効率を上げるための試行錯誤を繰り返していただける状況を作るお手伝いをすることが我々のミッションである。

製品としても、プロセス全体で業務効率を上げる工夫が生まれる傾斜を作り出すためにヒントとなる分析データを見える化するなど、お客さん自らが試行錯誤を繰り返すための機能を提供していく必要がある。

ドラゴンへの道はまだまだ先が長いのである。

今回のコラムと関連して、業務の電子化を実現する「SmartDB」を下記のページより詳細をご紹介しています。
また、株式会社三菱UFJ銀行様の「SmartDB」活用事例を公開しております。こちらもあわせてご覧ください。

プロフィール
前川 賢治
株式会社ドリーム・アーツ 取締役 執行役員 兼 CWO(チーフ・ワォ・オフィサー) 前川 賢治(Kenji Maekawa)
  • 大型汎用コンピュータ向けソフトウェア製品の輸入商社である株式会社アシストにおいて、製品開発を担当。 1996年にドリーム・アーツ設立に参画。
  • 本コラムでは、バブル後の大不景気を経て企業体質も健全化に向かっている現在、より現場力を高めるために「人」の「協業」をいかに支援し、革新していくべきかを考えます。

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