生産性を上げる会議術 2019年2月14日

第1回:図解で会議の問題構造をひもとく

第1回:図解で会議の問題構造をひもとく

働き方改革の議論が始まるずっと前から、最も無駄なもののひとつとしてやり玉に挙げられているのが「会議」だ。ある調査によると、会議の時間が長い、無駄な会議が多いと回答している人は4割を超える。
「無駄だ、無駄だ」と言いつつも、いろいろな会議をはしごしていると、一定の充実感があって、仕事をしたような気分になるのも否めない。そして、なかには単なるドライな意思決定だけでなく、重要な気づきややる気が得られるような会議もある。
時間が奪われるだけの無駄な会議と、アイデアや気づき、やる気が得られる創造的な会議の違いはなんなのだろうか?
筆者は大企業のコミュニケーションの課題を解決するソフトウエアを企画・開発する会社に所属している。そして、個人でも人工知能(AI)で会議を計測し、生産的な会議運営を支援するツールを開発している。
そのため、人間の知や創造性が交わりあう「会議」の場に強い関心を持ち、さまざまな調査と実験をしてきた。そこで得られた知見を生かし、会議の効果を高めるプチテクニックを紹介しよう。

会議の問題と構造

今回は、テクニック論に入る前に、まずどこから手を付けるべきかを明確にするため、会議の問題構造を整理する。そして、この問題構造を整理するやり方そのものが、会議のやり方を変えるプチテクニックのひとつなので、自分でどう応用するかも考えながらご覧いただきたい。

イメージ:会議中に「アイデアが出ない」という因果関係

上の図は、「偉い人が目的も告げずに会議の招集を部下に指示」するため、会議の「目的が曖昧」となり、「事前にアイデアを考えておくことができず」、会議中に「アイデアが出ない」という因果関係を示している。
このように問題の構造を整理して原因をたどってみると、どのような対策が打てるかを考える際に役に立つ。もしあなたが偉い人なら、会議を招集する際は明確に目的を告げることで、その後に派生する問題を防ぐことができる。また、偉い人でなければ、上司が会議を招集したタイミングで目的を確認しておけば、その後の問題を食い止めることができる。
実際の問題構造はこれほど直線的ではなく、多数の隠れた原因があったり、原因が相互に影響したりして悪循環に陥っている。

イメージ:「アイデアが出ない」悪循環

次に、「アイデアが出ない」の周辺に再び注目してみると、いくつかの悪循環がみつかる。
一つ目は「アイデアを言っても聞いてもらえない」から「アイデアが出ない」という循環だ。アイデアを聞く側からすると、これまで聞くに値するようなアイデアが出ていないから聞く耳を持たない。
二つ目は、「アイデアを実現する仕組みがない」から「アイデアを言っても実現がされない」。そして、どうせ言っても実現がされないから「アイデアが出ない」という循環だ。
悪循環に対しては、循環を断ち切って悪化を止める方法と、循環を利用して好循環を産み出す方法がある。
一つ目の悪循環に対しては、まずアイデアに対して傾聴するという姿勢を示すことで、いったんこの悪循環を断ち切ることができる。たとえば、会議でアイデア出しをする際に、この場では出たアイデアの実現性や質は問わず、批判は禁止であることを改めて皆に周知をする。これはよく知られたブレインストーミングのルールだが、今そのルールを守るべきときだということはよく忘れがちだ。そのため、今からそのルールを適用すると宣言をしておくことは大事だ。
一つ目の悪循環が断ち切れたとしても、アイデアを言ってもなにも実現されない状態が続いていたのでは、効果はすぐになくなる。
そこで、二つ目の悪循環にも対処する必要がある。ちょっとしたアイデアでもいいので、それを実現することで、悪循環を食い止める。そして、可能であれば、大きなアイデアでも実現できるよう仕組みを整えていくと、恒常的にアイデアが集まる好循環を生み出すことができるだろう。

どこから手を付けるべきか?

これだけ問題が複雑に入り組んでいると、問題構造が可視化できても、どこから手をつければよいかわからなくなる。
その際まず着目すべきは、矢印の一番上流、つまり根本原因だ。根本原因が解消できれば問題はきれいに片付く。しかし、自分たちが簡単に対策を打てる根本原因だけとは限らない。

イメージ:根本原因が解消できれば問題はきれいに片付く

たとえば、「偉い人しか話せない雰囲気」というのは会社の文化的なものなので、そう簡単に変えられるものでもなく、変えたからといって劇的な効果が出る訳でもないため、対策案としては優先度が低くなる。
次に着目すべきは、矢印がたくさん出ているところだ。

イメージ:複数の問題が解決するなら、その対策を試してみる価値はある

たとえば、「アジェンダ(議事日程)がない」部分から三つの問題点が発生している。アジェンダを事前に準備するのは比較的簡単で、それで複数の問題が解決するなら、その対策を試してみる価値はある。
そして、次に着目すべきは、悪循環が発生しているところの周辺だ。悪循環を断ち切り、好循環に転じさせることで、大きく改善できる可能性があるためだ。
根本原因、矢印がたくさん出ているところ、悪循環、この三つの視点で対策を検討してみて、最も効果が高く、コストが安いものから優先して取り組むのがよいだろう。

図による整理も会議テクニックのひとつ

このような問題構造を図で表現して、対策を考えるといったやり方も、会議テクニックのひとつだ。図で表現をして、複数人で同じものを見ながら議論をすることで、自分一人では見えていなかった問題が見え、気づきが得られる。
今回は会議の問題をテーマにしたが、このテクニックは、他の問題に対しても応用が効く。よって、会議のなかで問題解決をしなければならないときなどにご活用いただければ幸いである。

(株)共同通信社 b.(ビードット)より転載
※本記事は、2019/2/14時点で共同通信社の外部メディアに公開された記事を、許可を得て転載しています。

プロフィール
伊勢川 暁
株式会社ドリーム・アーツ サービス&プロダクトデザイン本部 InsuiteXグループ マネージャー 伊勢川 暁(いせがわ あきら)

2012年にドリーム・アーツに入社。
入社以来、企業におけるスマートデバイス活用や製品の企画・開発を担当。
ファーストリテイリング様向けの新規アプリ開発も手がけている。
現在は「InsuiteX」の開発に従事。

ニュース一覧に戻る