2021年3月30日

DXの本質は「人と組織、企業文化」にあった

「ITは苦手」から脱却してDXへの一歩を踏み出そう

さてこのコラムも3回目。第1回では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「デジタル化」は別物で、DXを推進するためには前段階である「デジタル化」が土台として必要であること。第2回では、土台としての「デジタル化」を深掘りし、「DXにつながるデジタル化」について話してきた。
そして、今回はDXの本質である「人と組織・企業文化」について掘り下げていきたい。

イメージ:DXの本質は「人と組織、企業文化」にあった

DXの要は「企業文化の変革」

改めて、2018年に経済産業省がガイドライン上で発表しているDXの定義をここに記す。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
(やっぱり長い・・・)

前半部分の「製品やサービス、ビジネスモデルを変革」は、世間でも認識されているように感じるのだが、忘れがちなのが後半の「組織、プロセス、企業文化・風土の変革」である。
「え?!デジタル使って新規サービスや新しいビジネスモデルを生み出せばいいんじゃないの?!」と思う人もいるだろう。しかし、人と組織・企業文化もトランスフォーメーションしなければ、「持続的・継続的なDX」は難しいのだ。
今まで「変革できない」と思い込んでいた、または「変革する必要もないと思っていた」が、「コロナ禍」で一気に進んだものがないだろうか。たとえば「押印業務」「対面での営業」「出張」そして「リモートワーク」。先送りしてきた課題がコロナ禍で一気に表面化しただけだ。結局、これまで疑問を持たなかった企業文化(業務・慣習)が変革の阻害要因として認識されたのだ。

私たちは「素早く」変革「し続ける」能力を身につけなければならない。ITシステムのみならず企業文化=固定観念を変革することが必須なのである。真のDXとは、デジタル前提でのビジネスモデル変革だけではなく、企業文化(人の心)まで変革することなのである。

あなたの会社は大丈夫? 変わらない企業文化

上述した「押印業務」「対面での営業」「出張」「テレワーク」など、これまで疑問を持たなかった企業文化(業務・慣習)はまだまだあふれている。
こんな話を友人から聞いた。

とある大企業の部長さん。自部署が紙業務であふれていたのでペーパーレスのためのITツールを導入しようと現場に持ちかけたそうなのだが、猛烈な反対にあったそうだ。 しかも、反対勢は超真面目で会社への貢献度も高いメンバーだっただけに部長さんは面食らったそうだ。

彼らは紙業務を滞りなく遂行できることが自身の強み・誇りであり、この業務自体を自分たちの「聖域」だと思い込んでいる。また、本人たちは認めたくはないだろうがITアレルギーなどもあるだろう。ITを信じていない=ITを使った先の新しい未来が見えていないということもある。
これも本人たちが悪いわけではない、あしき習慣・企業文化が根元にあるからだ。

DXに踏み出せない企業文化あるある

―高度成長期に売り上げ規模を拡大した大量生産前提の価値観

ピラミッド型の階層組織
過去の成功体験からくる意思決定。社員が疑問を持たず上から言われたことだけをやる。お客から言われたものだけをつくる。思考停止の状態。
失敗を許さない
一度失敗したら終わりかのような空気や評価制度。チャレンジしたくてもできない風土。
古い当たり前に縛られている
自社の競争領域が長らく変わっていない。自社のライバルはその業界の中だけだと思っている。世の中の流れを意識せず、自分の仕事のやり方がベストだと思い込んでいる。
多様な人材を排除
意見が対立した時に異分子を排除するような傾向がある。人の入れ替えが少ない。または社外とのコラボレーションに消極的。
プラン偏重型
「PDCA(計画、実行、評価、改善)」のPに時間をかけすぎる。プランに時間をかけすぎて、いつの間にか環境が変わってそのプランが役に立たなくなっていることも。

―DXをやらなきゃいけない認識はあるが、「自分には関係ない」

DX=IT部門?
「DX=システム刷新」「DXはIT部門に考えさせればいい」という誤解。自分には関係のない話だと思っている業務部門。
「専門外」の経営陣
経営陣の中にDXを語れる役員がいない。(「自分は専門外」「ITは苦手」と恥ずかしげもなく発言する)
ITアレルギー/人ごと
業務部門やバックオフィス部門のIT/デジタルアレルギー。誰もがDXは重要だというが、いざ自分の部門・業務に影響すると反対orスルー。

―そもそもDXを勘違い

戦略のない経営陣と
「AI(人工知能)使って何かやれ」など意味不明な号令。「最新の技術を使って何かやることがDX」だと思っている。(DX後のTo Be、真の目的がないとこうなる)
「DX」と「デジタル化」と「情報のビット化」が頭の中でごちゃごちゃ
テレワーク、ZOOM会議やZOOM営業/商談、物理的なハンコが電子印影に置き換わっただけでDXだと思っている。
部署新設など「形」から入ろうとする。その割にはDX推進担当に十分な権限を与えない。
PoC(Proof of Concept:概念実証)だらけ
実験だらけで結局何も進んでいない。(実際の市場で勝負を挑まないようなPoCは、“公園のレゴ遊び”と一緒、と言う専門家もいる)

まぁいろいろ出てくる出てくる。あしき習慣と古い頭の中。まだまだたくさんあって書ききれないが、気分が暗くなるのでいったんこのくらいにとどめておこう。

デジタル時代に求められる企業文化の要素とは

イメージ:デジタル時代に求められる企業文化の要素とは

DXはトップの掛け声だけでは実現されない。社員一人一人が腹落ちしマインドに変化がおき、それが組織全体に伝播(でんぱ)して企業文化が変わり、真のDXに近づく。  デジタル時代に求められる企業文化の要素を洗い出してみよう。

DXの本質と変革への必要性理解(特に経営陣)
DX/デジタル化を担う関係者(経営陣/業務部門/IT部門一体)間の共通理解は必須。DXをリードする経営層の役割を明確化しよう。
「変化し続けることが価値である」という思いが全社で共有されている
人間は既存のやり方を壊すことに「本能的に」抵抗を感じるものだが、会社全体で「変化し続けることが価値である」ことを共有すれば、変化を歓迎する空気を生み出せる。
自律的な組織コンピテンシー(行動特性)を育む
組織の方向性に腹落ちすれば、社員が自らの頭で考え始める。自分の頭で考えるようになると行動も変わる。業務のプロ自ら自分の業務をITでデザインし、環境の変化に合わせて修正する力を持つ。ITをIT部門に任せきりにしない。
心理的安全性のもとでの建設的対立が促される
挑戦&変革し続けるには、発展的なアイデアの対立や衝突は避けられない。 アイデアを育て、より良い判断をするために、建設的な対立を歓迎しよう。建設的対立には信頼関係と心理的安全性は欠かせない。
人材の多様性と柔軟な組織運営
異業種からの採用や社外とのコラボレーション、顧客との協創も積極的に進めるべきだ。 また、DX人材の育成にも注力したい。DXには専門性の追求だけではなく、視野を広く柔軟に持ち、情熱を持って何かをつくり出そうという姿勢が重要になる。
リスク許容と失敗から学ぶ姿勢
挑戦する人のモチベーションを向上させるための評価制度の検討は重要だ。 また取り組み方法として、Quick Start & Quick Success(素早く小さく始めて大きく育てる)を推奨しよう。失敗があっても素早く修正して精度を上げるやり方が身に付けば、失敗が成功につながる。

企業文化の変革は、一朝一夕にはいかない。が、ここで取り組まなければDXにつながらず企業は存続できないだろう。焦らずじっくり取り組むしかない。価値観を変えるということは、手放さなければならないものも大きいので経営陣の「覚悟」も必要だ。
さて、冒頭にあげた私の友人の話。その後、反対勢力はどうなったか気になって聞いてみた。

部長さんは、現場が納得いかないままツールを入れても結局使われなくなると思い、十分な説明の時間を作ったそうだ。今後会社がITで変革していく未来の話や、個々の仕事のやり方も変えていかねば生き残れないという話をすることにより、担当者の腹落ちまではいかなかったものの渋々ITツールの導入を実施できたという。

そして、いざツールを使い始めると、担当者はオペレーション業務が楽になり、空いた時間でより付加価値の高い業務に意識がいくようになったという。
その部署はバックオフィスだったため、自分だけではなく社員全員の提出書類が紙からデジタルに変わり、全社の業務効率化につながっただけでなく、社員から「ありがとう」と言われるようになったという。この「ありがとう」の一言で担当者は「ITがもたらす明るい未来」にやっと気付いたそうだ。
この企業はDXへの第一歩が踏み出せそうな予感がした。

さて、次回は「DX/デジタル化はじめの一歩」と題して、具体的に何から進めていくべきかの話をしよう。

(株)共同通信社 b.(ビードット)より転載
※本記事は、2021/3/25時点で共同通信社の外部メディアに公開された記事を、許可を得て転載しています。

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執筆者
  • 株式会社ドリーム・アーツ
  • 社長室 コーポレートマーケティンググループ ゼネラルマネージャー
金井 優子(かない ゆうこ)
プロフィール
  • 大手SIer出身。データ分析・活用をきっかけにシステムエンジニアからマーケティングに職種をチェンジ。現在はコーポレートマーケティング業務で自社のブランディング確立に奮闘中。