第二回 IT活用による『現場からの協働革新』セミナー

第二回 IT活用による『現場からの協働革新』セミナー 〜新世代 協業型業務支援システム『ひびき®』最新活用事例〜

2005年6月16日、大手町サンケイプラザに於いて開催された、DA Forum 2005第二回 IT活用による『現場からの協働革新』セミナーは、当日450名を超えるお客様にご来場いただき、大盛況のうちに終了となりました。誠にありがとうございました。

変化が激しく非連続的なビジネス環境である昨今、企業の成長力・競争力を支えるのは現場力であるとの認識の元、昨年より提唱している 【Co-Innovation:現場からの協働革新】 にスポットをあて、現場力がいかに企業戦力の維持・向上に必要であるかを提起いたしました。

基調講演に株式会社ローランド・ベルガーの取締役共同会長であり、早稲田大学大学院教授でもある遠藤功氏をお迎えしました。また、IT活用による現場革新の最新事例として、株式会社日立製作所オートモティブシステムグループ様より 【DreamArts Co-Innovation Suite ひびき®】 の事例を発表いただきました。

セミナー概要
日時
2005年6月16日(木)13:30~(13:00開場)
会場

大手町サンケイプラザホール

東京都千代田区大手町1-7-2

■地下鉄:丸ノ内線・半蔵門線・千代田線・東西線・都営三田線 大手町駅下車A4・E1出口直結

■JR:東京駅下車丸ノ内北口より徒歩7分

定員
400名(無料)
主催
株式会社ドリーム・アーツ
協賛
  • 日経メディアマーケティング株式会社
  • 日本ヒューレット・パッカード株式会社
協力

NRIデータサービス株式会社、株式会社インテック、新日鉄ソリューションズ株式会社、ユーディービィー・リナックス・ジャパン株式会社、ニイウス株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイト名古屋、TIS株式会社、東芝ソリューション株式会社、西日本電信電話株式会社、エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 順不同

タイムテーブル
13:00
13:30

受付

13:30
13:40

開催挨拶

13:40
14:30

基調講演:『現場力とIT』~ITの位置付けと効能~
株式会社ローランド・ベルガー取締役会長
早稲田大学大学院 教授
遠藤 功 氏

14:40
15:30

パネルディスカッション:『現場力の向上にITはどう役立つのか!?』

パネリスト
  • 株式会社ローランド・ベルガー 取締役共同会長 遠藤功氏
  • アサヒビール株式会社 管理本部 IT部長 奥山博氏
  • 経済産業省 資源エネルギー庁 総合政策課 課長補佐(前 情報政策課 課長補佐) 村上敬亮氏
  • 株式会社ドリーム・アーツ 代表取締役社長 山本孝昭
コーディネーター
  • 日経BP社 日経情報ストラテジー編集長 多田和市氏
15:45
16:30

現場からの協働革新を推進する
【新世代協業型業務支援システム ひびき®】の活用事例

【最新活用事例】
株式会社日立製作所オートモティブシステムグループ
第三事業本部技術支援室IT推進グループ部長代理
久保 厚男 氏

16:30
16:40

閉会挨拶

基調講演

『現場力』とIT 〜ITの位置づけと効能〜

  • 株式会社ローランド・ベルガー 取締役会長
    早稲田大学大学院 教授
遠藤 功 氏

基調講演では、世界有数の戦略系コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの取締役共同会長であり、ベストセラー「現場力を鍛える」の著者、遠藤功氏を招き、経営における現場力の重要性、それを育てるためのポイントについて語っていただきました。

企業間で広がる現場力の格差

グローバル競争が激化し、国内市場の成長鈍化が指摘される近年。しかし、その中にあっても、トヨタや花王に代表される「強い企業」は存在しています。
「『強い企業』と一口に言ってもその基準は様々です。収益力、株価、ブランド価値、顧客満足度の高さ。ほかにも、オンリーワン技術や新しい価値創造を生み出す独自性、従業員の活気といった尺度もあるでしょう。しかし、ここで挙げた物差しは、企業活動の『結果』に過ぎません。大切なのは実体を理解することです」と遠藤氏は述べます。

実体を理解する上で、遠藤氏は経営を大きく三つの要素からなるピラミッド構造で説明します。最上位が、「なぜ(Why)」この会社が存在するのか(ビジョン)。二層目が、「何を(What)」具体的な価値として生み出していくのか(競争戦略)。三層目が「どのように(How)」価値を生み出していくか(オペレーション:現場)、です。
けれども「組織体の求心力となるビジョンを掲げ、いくら合理的な競争戦略を作っても実行できる組織能力がなければ画餅に帰します。強い会社をみると、この3つの要素がそれぞれ磨きこまれています。なかなか成果が出ないという会社は、いずれかの要素が十分に鍛えられていないことが往々にして見受けられます。特に気になるのが現場力の差です」。

現場力とは、自ら問題を発見し、自ら解決する現場の能力。決められたルーチンワークをこなすだけでなく強い当事者意識を有していることが現場力の前提にあると遠藤氏は説明します。「さらに、現場の一部の人だけでなく全員が理解し参画している組織化された力が重要です。仕事は業務連鎖としてつながっており、自分だけでできることは極めて少ないからです」。
現場を動かすガソリンとなるのは「問題」。「問題のない現場はありません。トヨタや花王でさえも問題は常に山積しています。ところが、こうした企業の現場は問題大好き人間の集合体です。いつも問題を探し出しては、プロジェクト化し、解決することにやりがいを見出しています」。その背景には、自分達が需要や利益を生み出しているのだという自覚や価値観が社員に浸透していることがあげられます。さらに、問題解決能力を磨きこみ、コストや品質、納期、CS※1などで一番を目指そうという高い目線、つまり、オペレーショナル・エクセレンスを追求する姿勢が共通項にあげられると分析します。

「問題の中でも、コストと品質、在庫削減と欠品率の低減、といった二律背反の克服こそ、現場の使命。トヨタでは『いつも、相反することでも同時に、高次元で調和させ、克服する』ことをトヨタの価値と位置づけて取り組んでいます。ビジョン、戦略、オペレーションというピラミッドに加え、主役はあくまでも現場であり、それを本社や経営層がサポートするという逆ピラミッドの構造が表裏一体で噛み合っていることが、強い企業の条件といえます」と遠藤氏は指摘します。

※1CS(Customer Satisfaction)顧客満足: ・顧客自身が判断し決定する商品・サービスの品質価値を計るもの。

トップの仕事は現場のサポート「社員のやる気に肥料を与える」

トヨタや花王といった大企業だけでなく、小さな企業でも元気な現場を持つ企業はたくさんあります。岐阜県に本社を持つ住宅用電気設備資材メーカーの未来工業は、売上高240億円、経常利益36億円、15%の高い利益率をあげています。「同社の社長は『当社は後端ローテク企業ですが、ささやかでもいいから差別化をはかり、他とは違う工夫を凝らすことが競争力の源泉』と話しています」と遠藤氏。
同社のモットーは、現場が一丸となって取り組む「高速PDCA」の推進です。顧客の工事業者から聞こえてくる、部品にもう一つ穴をあけられないか、角を丸くできないか、配線をもう一本増やせないか、といった声を営業やサポートが吸い上げて、設計部門が即座に製品に反映。その素早い対応が収益力の向上につながっているといいます。社長の仕事は社員のやる気という「木」に肥料をやること。同社の社員の提案件数は2002年度で8000件。社員一人平均10件以上の提案活動が継続的に行われています。これをやる気の証明と未来工業の社長は評しています。

サービス業の例では、千葉県にある夷隅ゴルフクラブがあります。こちらのゴルフ場は交通の便が悪いにも関わらず、一日当たりの入場者数は近隣コースの1.3倍で、90%超の高いリピート率を誇ります。経営理念に「立地の悪さを克服した千葉県一サービスのよいゴルフ場創り」を掲げ、2003年には専門誌のベストコースランキングの接客部門で1位に輝き、顧客満足度(総合)は94.5%と非常に高いのが特徴です。
20年以上続く小集団活動発表会があり、キャディ、フロント、食堂の従業員の接客品質は徹底しています。「たとえばキャディさんが提案したものにロストボールを効率よく探すための活動がありました。コツを知っているベテランと違って、新人はボールをすぐに見つけられません。同ゴルフ場では誰がキャディを担当してもまごつかず、サービス品質を一定に保つため、キャディ自らが自分達の手で解決しなければならないと考えました。そこで、独自にTQMの手法を学び、ホールごとのロストボールの統計をとり、特性要因図を作って真因を探求、対策、改善を行いました。この結果、対応前は28件のロストボールが改善後は3件に減ったなど成果を公表するに至っています。立地の悪さが現場の力で克服されているのです」と遠藤氏は述べます。

「売上はお客様のご支持 利益は社内の知恵」

前述の例をみても、強い現場を作るためのポイントは、業績を自分達の手で作り出すのだ、という強固な意志と、柔軟な頭脳、そして強靭な足腰が現場に埋め込まれていることにあるといえそうです。
「提案活動など、問題の発見、提起、解決のアプローチも仕組みとして作りこまれていることも見逃せません。また、一気通貫の仕事の流れをつくり、業務プロセスを整流化、業務を進化させる梃子としてITの活用も検討しています」。

たとえば、アスクルでは「売上はお客様のご支持、利益は社内の知恵」と考え、1998年から2003年まで5年間に在庫水準を二分の一、欠品率を五分の一にするオペレーションプラットフォームを、SCMや需要予測ツールなどを駆使して構築してきました。遠藤氏は、IT活用におけるポイントのひとつとして、人の生産性向上ではなく、「湧源性」を開放させるための統合的な施策が必要と述べます。「あくまでも人による問題解決を支援するツールとしてITを活用し、人の知恵による業務進化や、需要創出、新規事業など価値創造に活用することが重要です」。
システム上に載る業務の”魂”を理解、浸透させるには、システム教育ではなく、新業務の教育と実践であり、「ITプロジェクト」というもの自体に意味がないといいます。ユニクロでは業務開発機能と情報システム機能をワンセットと捉え、情報システム部ではなく、業務システム部という名称を使っています。
「現場には問題解決ができるポテンシャルを持った人材が多数存在します。個人、チームの潜在力を開放するために、ITを活用し、人材開発、組織活性化を行うべきです。需要や利益の創出の源泉は人です」。

IT活用におけるポイントの2つ目は「見える化」です。問題を顕在化させ、解決の進捗状況、知恵、結果を見えるようにすることが現場力を高める出発点だといいます。
「見える、というのは、意識しなくても目に入ってくる状態。たとえば、現場の異常をランプで知らせるトヨタのアンドン方式が好例です。過度のIT依存は『見えない化』に陥る危険性もあります。まずはアナログで視覚的に訴えること。問題があればさらにITを使って情報を深く掘り下げるという使い分けが必要です」。

経営環境に左右されず、自ら需要と利益を生み出すための自律的問題解決型の組織が、昨今ますます強く求められてくることは間違いありません。遠藤氏が強調するように、「業務、人、ITの3つプラットフォームを連携させ、あくまでも人づくりを中心に据えて現場力の強化を図っていくことがポイント」といえるでしょう。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、現場力を鍛えるために組織が取り組むべきこと、IT活用の位置づけなどをテーマに意見が交換されました。企業のIT部門、中央官庁、コンサルタント、ITベンダーというそれぞれの立場、視点から、現場力の活性化を成功させるためのポイントがいくつも示されました。

パネリスト
  • 遠藤 功氏(株式会社ローランド・ベルガー 取締役共同会長 早稲田大学大学院 教授)
  • 奥山 博氏(アサヒビール株式会社 管理本部 IT部長)
  • 村上 敬亮氏(経済産業省 資源エネルギー庁 総合政策課 課長補佐)
  • 山本 孝昭(株式会社ドリーム・アーツ 代表取締役社長)
コーディネーター
  • 多田 和市氏(日経BP社 日経情報ストラテジー編集長 )

現場力が質的に変化問題解決能力が問われる

多田

多田 和市 氏

80年代、日本企業の現場は高い競争力を誇り、他の先進諸国の間でも手本とされました。しかし、90年代、バブル崩壊後のリストラや構造改革が進む局面で現場は疲弊し、むしろ経営者の手腕が脚光を浴びるようになります。そして現在、品質や安全に関わる事故などが相次ぎ、日本企業の現場が再考を迫られています。背景にはリストラや企業間の吸収合併によって生じた「歪み」があるといわれますが、いま改めて現場力の重要性について考えてみたいと思います。

遠藤

どの企業もそうですが、自社の現場を知っていても、他社の現場についてはよく知らないのが実情です。そのため、品質や安全の観点で、自分達の現場で何が強みで何が弱みなのかを客観的に把握できなくなってきていることが現場力の弱体化につながっている一因だと思います。それに加えて、現場力の質的変化があげられます。かつて経営者層は、現場力を足腰の強さだと考えていましたが、今は自律的に問題を解決できる頭脳こそが現場力として重要です。ただ、足腰も相当弱っている企業が少なくありません。

多田

スーパードライなどの強い商品をお持ちのアサヒビールは、賞味期限のチェックなど品質管理では製造現場、営業現場が力を合わせて取り組んでいるということですが。

奥山

奥山 博 氏

当社は経営的に苦しい時期があり、その後、鮮度管理の取り組みとしてSCM※1、営業や生産部門等を含めた全社的な業務改革を行いました。それにより問題を解決しようとする現場力はかなり培われたと自負しています。しかしその後、新たな競争相手が現れるなど外部経営環境が刻一刻と変化し、会社自体も事業ドメインの拡大、組織の細分化と複雑化しました。そして社員もマルチタスクをこなさなければならない状況となっています。そうした中で、過去と同じ現場力では通用しないと感じています。それぞれの部門の目的を再定義し、コミュニケーションのあり方を変えていく必要があります。まずは数ある課題に優先順位をつけて、ピントがずれないようにすることが大事です。情報システムですべて解決できるとは思いませんが、IT部門もこうした取り組みをサポートしていきたいと考えています。

多田

こうした現場力の質的変化に対して、ソリューションを提供されるITベンダーの立場からご意見をお願いします。

山本

これまでのビジネスITが果たす役割と目的は、シンプルに言うと最適化されたビジネス・プロセスや業務フローの自動化と高速化でした。しかし、今後はもっと経営環境や個々の現場の状況変化に対して、臨機応変に対応していくためにITが活用されなければなりません。特に昨今のように非連続的で不透明な先が読みにくい時代にあっては、組織のダイレクトで生な対話が一層重要になっています。ドリーム・アーツでは、今後ITで支援すべきは、この対話の質を高める上で不可欠なコンテキスト(文脈)の共有だと考えています。共有すべき事象が発生した時点でその情報をできるだけリアルタイムに共有できる仕組み。或いは共有すべきコンテンツや情報、データが然るべき人や組織に自動的に届く仕組み。こうした組織内でコンテキスト(文脈)を常に共有できる状況をITで作ることで、会議やミーティング、電話といった生の直接対話でもすぐに本題に入ることができ、対話の質が向上し、より多くの時間を創造的で戦略的なディスカッションやブレインストーミングに使うことが出来ます。言い換えれば質の高い「阿吽の呼吸」を作り出し、こうした質の高い対話の積み重ねが臨機応変でスピーディな現場を作り出すと考えています。

多田

経済産業省は産業活性化を図る上で、現場の「見える化」をどのように捉えていますか。

村上

「見える化」については、現場自身に力があることと、それを活かせる組織力があることの両面が重要だと思います。ITを導入するだけでは効果が薄く、分権化をはじめ、現場とトップが互いに見えるようにする組織改革を並行することが競争力を高める条件です。しかし、2003年に一部上場企業を対象に行った調査では、全社最適のためにIT導入と組織改革を同時に行っていると回答した企業は2割以下に留まりました。今後さらにCIOに期待される役割は大きくなると考えられます。

村上 敬亮 氏

中央官庁も自分たちの内部の「見える化」に本腰を入れなければなりません。ややもすれば、現場が、他の政策分野の動きよりも「よく見える」業界団体の意向を重視して動いてしまうことがあるためです。人は見える方向に動いてしまう習性があるので、行政全体としての課題と動きが正しく「見えて」いなければなりません。それを正すためにコーディネートしていく組織体制の見直しが必要です。

現場力を鍛えるにはface to faceの対話から

遠藤

遠藤 功 氏

現場力を向上するには、ITを主語にしないことです。まず業務ありき。ですから、「ITプロジェクト」という言葉は主客転倒だといえます。そもそも業務改革ではSCM、CRM※2、KM※3などのパッケージをインストールすることが目的ではありません。人を作ることが本当の狙いです。システム部門の仕事の7割は、現業部門との戦いです。現場を説得して動かす。つまり、汚れ役を引き受けるIT部門であるか、逃げてしまうIT部門なのかで改革の結果は大きく異なるように思います。

奥山

アサヒビールでは、業務の流れと情報の流れを可視化し整理する「情報の整流化」に取り組んできました。システムに業務の魂を入れていくために、ユーザー部門とのやりとりには力を注いできました。ユーザー部門からマンパワーを供出してもらいながら、具体的な革新プロジェクトのスケジュールを決めていきますが、ユーザー部門も予算や人が余っている訳ではないので、総論で意見が一致しても各論レベルで反発を受けることが多くあります。

多田

ITではなく、まず業務ありきという考え方を実践されていますね。それに対してITベンダーの提案の仕方も変わってきているのでしょうか。

山本

山本 孝昭

まずここ2年ほどで弊社に問い合わせをされる部門が変わってきています。以前は製品の技術やスペックに関してIT部門からの問い合わせが多かったのですが、最近は経営企画部門やマーケティング部門、営業部門など現場からのビジネスの課題に直結した問い合わせや相談が増えています。こうした方々は、年度内のノルマやコミットメントを達成するために、直接的で実利的なスタンスでITツールを検討しており、結果的に意思決定も非常に迅速です。

多田

IT部門とユーザー部門がうまく妥協点を見出すための条件とは何でしょうか。

遠藤

強い企業を作るために「見える化」は必須ですが、現場には都合の良いものだけを見せ、悪いものを隠そうとする抵抗感があります。けれども現場が隠そうとする問題や異常を見えるようにすることが「見える化」の真の目的です。最近、「見える化」に取り組みたいと問い合わせてくる企業が多いですが、まず「見える化」は技術論ではなく思想として社員に徹底するところから始める覚悟が必要です。

多田

KPI※4やBSC※5などを使い、目標管理設定を行う企業も見られますが。

遠藤

正直なところ、数字はいくらでも変えられるのです。大切なのは数字ではなく事実を見えるようにすること。営業日報やクレームを壁に貼り出すなどで、アナログ技術のほうが事実がよく見える場合も多々あります。こうする習慣を作ることで次第に隠さないことが社内文化になります。風土ができると、数字に対する信憑性も増してきます。人を作らなければITをいくら導入しても風土や文化ができてこないでしょう。

奥山

社員からの声を集める情報カードを始めて8年ほどになりますが、最初の1~2年は、カードに書かれる内容はいい話ばかり。しかし、トップが「カードにはありのままをリアルタイムで記入、共有しなさい」と号令をかけたところだいぶ変わり、使いこなすようになりました。トップの強いリーダーシップの必要性を改めて実感しました。

村上

先ほど述べた経産省の調査結果で示されたCIOの悩みとして、現場に自由にやらせるためのイニシアチブの付与と、統制をとるための締め付けのバランスの取り方が難しいという意見が多く見受けられました。ただし、そのやり方には唯一の正解はなく、それぞれの組織の文化やCIOの考え方によってマチマチのようです。しかし、競争力のある企業に見られる共通の傾向として、ビジョンやミッション、ゴールの全社的な共有、部門ごとの小さな「見える化」をまず確実に推進していることが挙げられます。その上で、その輪を徐々に大きくし続けていくことが、「隠す化」を防ぐポイントだと思います。現場に「上手くできた」という手ごたえや実感を持たせ、そのサイクルを続けることで、人も育っていきます。

遠藤

まずは「face to face」で互いの腹を見せ合える環境を作り出すこと。強い企業では、最初は部分最適から取り組み、それをオープンにぶつけあい、全社的な最適解に近づけています。その過程でITをツールとしてどう活用するかが鍵になると思います。

※1SCM(Supply Chain Management) 供給連鎖管理:
取引先との間の受発注、資材の調達から 在庫管理、製品の配送まで、 コンピュータを使って総合的に管理する手法。
※2CRM(Customer Relationship Management):
情報システムを応用して企業が顧客と長期的な関係を築く手法。
※3KM(Knowledge Management)知識管理 :
個人の持つ情報や知識を収集・整理して組織内で共有する手法。
※4KPI(Key Performance Indicator)重要業績指標:
情報化や業務改革などのプロジェクトで期待する目標や効果に対し、その達成度合いを定量的に測定するための評価指標
※5BSC(Balance Score Card)バランス・スコアカード:
組織の戦略や事業の目標を分かりやすく表現するために (1)「財務の視点」(2)「顧客の視点」(3)「業務プロセスの視点」 (4)「人材と変革の視点」 という4つの視点から組織のビジョンや戦略をマネジメントする方法。
事例紹介

自立した【現場】の実現を目指して 業務推進モラルを向上させる取組み-見える化-

  • 株式会社日立製作所
    オートモティブグループ
    第三事業本部技術支援室
    IT推進グループ 部長代理
久保 厚男 氏

2004年10月に、株式会社日立製作所、トキコ株式会社、株式会社日立ユニシアの三社が合併して誕生した新生・日立オートモティブシステムグループ。その第三事業本部では、前身のトキコ時代に、業務改革に着手。現在は、INSUITE®Enterprise:インスイート・エンタープライズ(以下:INSUITE®)を基盤とする社内情報ポータルを構築し、コミュニケーションツール、ワークフローツールとして活用されています。さらに「ひびき®PROJECT」を導入し、現場(間接業務)の「見える化」を推進。音声、映像、CADデータなどの非構造化データを含むトータルな情報資産の活用による、自律した職場の実現、業務推進モラルの向上を目指しています。

自動車のエレクトロニクス化をリードする日立オートモティブシステムグループ

21世紀の自動車関連技術は、ゼロエミッションや超低燃費の実現、危険・衝突回避などの予防安全の進化、情報技術の進展による利便性の向上などで飛躍的に進化することが予想されています。そのキーワードが、自動車の電動化、エレクトロニクス化です。日立オートモティブシステムグループでは、総合電機メーカーとして培ってきた幅広い技術力と専門システムインテグレーターとしての豊富な経験を自動車技術に集結。長期テーマとしてITS統合制御の実現を掲げつつ、「環境」「安全」「情報」の3つの分野における技術開発に重点を置いています。
その中の第三事業本部では、ディスクブレーキやサスペンションシステムなどの自動車部品といった走行制御システムを開発。さらに独自の振動吸収技術などを生かした産業用機器、ドラム式洗濯機、コンプレッサ製品など様々な応用製品の開発にも取り組んでいます。

BPRと並行して情報システムを更改 基盤にはINSUITEを採用

第三事業本部がBPR※1に取り組んできた理由について、久保様は次のように説明します。「これまでのIT化は部門単位、個人単位のレベルで推進され、情報が部門内に滞留しがちでした。また稼動するシステムは長年の機能の追加、変更を経て、複雑化していました」。そのため、メンテナンスが次第に難しくなり、担当者以外の人が十分に利用しきれないという属人的な仕組みが生まれていました。製品ごとに事業所が地理的に分散していたため、事業所間の横連携が取りにくく、ビジネスを進めるに当たって各事業所のローカルルールが発生していたことも情報の分断化に拍車をかけました。「情報を必要とする社員も、最初にどの部門に問い合わせればよいか分からないなど、欲しい情報や回答にすぐ辿りつけないことがしばしばでした」。

そこで改革推進プロジェクトでは、大きく二つの課題を目標に掲げました。一つ目が、「情報知識を共有化し、組織的な協同作業を実現する」こと。情報を共有する文化と、共有するための環境づくりを念頭に、ポータル化されたコミュニケーションツールの導入を検討しました。

もうひとつが、「ネット上ですべての仕事を行う」こと。日々完結型業務体制の確立と、プロセス見直しによる業務の中抜きを実現するため、ワークフローシステムを導入することにしました。
「具体的な改善対象としては、決済業務のスピードアップ、事務工数20%削減を掲げました。そして、最も実現したかったのが知的資産のスパイラルアップでした」。知的資産のスパイラルアップとは、情報共有のプラットフォームを構築し、それをもとに仕事の成果物や個人の持つ知識、ノウハウなどを文書や資料に可視化。知的資産としてデータベースに蓄積し、これらの情報を利活用することで、重複業務を排除し、情報資産全体の価値を時間とともに向上させるというシステムです。

「改革推進プロジェクトでは、システム構築に際して、一画面ですべて実行できるポータル製品として、ドリームアーツのINSUITE®を採用することにしました。どこからでも利用できるWeb対応の製品であり、同時に高いセキュリティを備える点。そしてユーザーが直感で使える操作性、高いメンテナンス性、コスト面などを総合的に評価して決定しました」。

※1BPR(Business Process Reengineering): 業務内容や業務の流れ、組織構造からシステムまで含めた業務を抜本的に改革すること。

コミュニケーションツールとワークフローツールとして活躍

第三事業本部では、INSUITE®を基盤として、「HITACHI AS3 Development Business System」という社内ポータルを構築しました。標準機能として、施設予約などのスケジュール、タスクリスト、連絡掲示板、共有アドレス帳、メーリングリスト、ライブラリ、ファイル共有、統合検索、リンク集を持たせています。

これにより、会議の日程調整などにかかる時間が大幅に改善されたのは勿論、事業所間での情報共有がスムースに行えるようになったといいます。

「A事業所の主要顧客からB事業所に対して、新規の問い合わせがあった場合も、A事業所と主要顧客との間の過去のやりとりなどをデータベース上の報告書などをチェックすることで、様々な角度からの情報発掘が可能になりました。思いがけず有益なヒントが見つかるなどビジネスチャンスを拡大するコミュニケーションツールとして役立っています」。
さらに、ワークフローツールとして決済業務の簡素化に活用。各種申請伝票の起票から決裁、保管までの一連のプロセスを電子化することに成功しました。たとえば、出張前後の旅費命令書の処理に費やされる総工数は、従来まで12工程5日間だったものが、5工程1日に短縮されています。

システム導入の際には、現場の意見を広く集めました。「システムは使わない人がいれば十分に機能しません。情報システム部門は使おうとしない人を”抵抗勢力”のように見なしがちですが、実はシステム構築の上ではキーマンというべきです。彼らは使わない理由をきちんと持っていることが多い。しかもそれを情報システム担当者が気づかなかったり、見落としていたりするシステムのウィークポイントであることが少なくありません。また、彼らを納得させて味方につけると一転して熱烈な信者になってくれることが珍しくないのです」。

INSUITE®を基盤としたコミュニケーションツールは、社員にシステムを使ってもらうための癖付けの役目を果たす上で大いに活躍しています」と久保様は述べます。

「ひびき®PROJECT」で現場の「見える化」を推進コミュニケーションツールとワークフローツールとして活躍

さらに同事業本部では、これまでワークフローやコミュニケーションツールで取り扱っていた定型的な構造化データに加え、音声や映像、CADデータといった非構造化データも共有、活用したいと考えました。非構造化データは全体の7割を占めており、本当の意味でのトータルな情報共有を進める上で避けて通ることはできません。

そこで、情報を一元管理できる仕組みを検討。システム要件として、社員による自発的な業務管理が可能で、問題を顕在化できること。情報資産を過去のものを含めてセキュアかつ利用権限などを明確にした上で行える高度共有の仕組みを考えました。そして、最終的に選択したのが、「ひびき®PROJECT」でした。

「『ひびき®PROJECT』では、現場(間接業務)の「見える化」を行うことが一番大きな目的。自律した職場の実現と、業務推進モラルの向上を進めていきます」。階層構造を持つ組織では一般的に、経営層に近い上層は業務推進に対する意欲やモラルが高いものの、現場に近くなるほどそれが低くなる傾向にあります。

「しかし、『見える化』によって情報の共有化が進むと、部門の壁が取り払われ、論理的に組織がフラットになります。現場が自発的に情報を収集、分析、判断し行動に移す風土が生まれ、モラルも高まると考えています」と久保様。今後の情報共有化の進展に確かな手ごたえをつかまれているようでした。