2011 BCM/BCP:基調講演
東日本大震災からの教訓 -想定外の危機を乗り越えるための事業継続計画・マネジメント-

東日本大震災からの教訓
-想定外の危機を乗り越えるための事業継続計画・マネジメント-

日時
2011年7月26日 13:00~16:55
会場

ベルサール九段 大ホール

主催

東洋経済新報社

基調講演
早稲田大学ビジネススクール教授
                                株式会社ローランド・ベルガー会長 遠藤 功氏

危機を乗り越える現場力

  • 早稲田大学ビジネススクール教授
    株式会社ローランド・ベルガー会長
遠藤 功氏

3月11日以降、さまざまなメディアで「現場力」の3文字が使われている。遠藤功氏が7年前に『現場力を鍛える』を著して以来、すっかりビジネスシーンの隅々にまで浸透した証なのだろう。現在、あらためて現場力の重要性が再認識されている。

あらわになった現場力の格差

日本の現場はたくましかった。「後ほど登壇いただくヤマト運輸は、あの日からわずか15日間で集配を再開しました。奇跡的な、ありえない速さです」と賞賛する遠藤功氏は「一方で、復旧にスピード感のない企業もあり、現場力の格差があらわになった」と指摘する。そもそも、緊急時に頑張っている姿だけを見て現場力があると勘違いしてはいけない。

「現場力には3つの条件がある」と遠藤氏。 「当事者意識を持ちながら知恵を出して課題に立ち向かう問題解決能力。全員参加で面の力を発揮する組織能力。コストや品質といった競争優位につながる独自性。これらの条件をクリアして初めて現場力があると言えるのです。こうした、自立性や自発性が高く思考回路が磨かれている現場は、同時に日常において非日常への備えも磨いていると言えるでしょう」。

現場力を磨き直すきっかけに

平時の現場力こそが緊急事態への対応を左右すると強調した遠藤氏は、これからのBCMを考える3つの視点に論点をつなぐ。

「まずはプランです。復旧にメドが立たない時の生産手段や調達など、”代替”までを盛り込んだ計画が欠かせません。大局は本部、局所は現場を信じて任せるといった、本部と現場の役割分担を明確にプランする必要もある。

セミナー会場の様子

2つめはケイパビリティ、組織能力。被災した現場が、何が起きているのか把握できないといったCaos(混沌)の状態に陥る中では、そこで働く従業員のオーナーシップや知恵こそが現場を救うのです。

ドラッカーが『日本の現場にはナレッジワーカーがいる』と看破しましたが、そうした従業員を育てるとともに、日常の仕事の中でイレギュラーな事態への対応能力を鍛錬し続けることでケイパビリティを高めていかなくてはならない」と続ける。

最後は、リーダーシップだ。「過去の情報や経験に基づいて意思決定する判断、未来に向けての意思決定である決断をタイミングよく下せる現場のリーダーが欠かせません。そして、いざという時にも情報がスムーズに流れるように、日頃から現場全体の一体感を醸成する緊密なコミュニケーションも必要でしょう。メンバー間の濃い関係が、実体として機能するチームの基盤になるのです」。

遠藤氏は、BCMへのチャレンジを絶好のチャンスだととらえている。「長期的な視野で日本独自の根本的な競争力である現場力を磨き直す、またとない機会ではないでしょうか」と。

セッション講演
株式会社ドリーム・アーツ
                                    代表取締役社長 山本 孝昭

想定外を切り抜ける
自律的な危機管理

  • 株式会社ドリーム・アーツ
    代表取締役社長
山本 孝昭

ドリーム・アーツは、情報共有やナレッジマネジメント領域のパッケージソフトウェアを開発、販売する独立系プロバイダ。450社を数えるユーザーリストには、日本を代表する著名な企業の名が並ぶ。3月11日以降は、共通した数多くの相談が寄せられているという。

アナログ時間を取り戻すためのIT

ドリーム・アーツは、ビジネスに「良質なアナログ時間」を取り戻す、というおよそIT企業に似つかわしくないスローガンを掲げてきた。なぜか。

「ITにできることはさっさと済ませて端末の前から離れ、もっともっと現場に触れていただきたいのです」と山本孝昭氏。「3月11日以降、携帯電話が機能しない中での安否確認や情報収集、随時決定される情報を伝達する方法など、数多くのお客様やパートナーの方々から共通した課題感のご相談をいただきました。つまり、そうした仕組みを普段から利用しているグループウェアなどの情報共有基盤に載せられないかという内容だったのです。

『日の丸BCM』という最適な解

お客様との対話からもシナリオ型BCPの限界は明らかでした。その中で想定外の事態に対応するためには自律的な現場力が不可欠であり、初動期における緊急事態管理が被害の最小化と復旧へのトレンドを左右するとの基本認識が共有されている。

「お客様とのディスカッションで、復旧や回復期に偏重した既存のBCMでは不十分だ。しかし、すぐに完璧な仕組みを構築することは難しいし、そもそもどこまでコストをかけて突きつめるべきなのか判断が難しいなどの課題も共有することができました」と山本氏。「そして、ディスカッションの度に『他社はどのように対応しているのだろうか。優れた仕組みやアイデアを共有することはできないか』というフレーズを何度も耳にしました」。

セミナー会場の様子

やはり、多くの企業はBCMを事業上の競合要素とは認識していない。とすれば、さまざまな企業が知恵を出し合って共に育成し発展させていく仕組みの可能性も現実味を帯びていく。「そこで、使えるメディアや道具ならば何でも取り込める仕組みをクラウドで提供するBaaS、すなわちベストプラクティス・アズ・ア・サービスという解にたどり着いたのです。

プログラム
ゲスト講演Ⅰ
株式会社ドリーム・アーツ 営業統括本部 本部長 安達 尊彦

BCPの反動と教訓
株式会社レンタルのニッケン
コンプライアンス室長 兼 取締役管理本部長 望 叶太郎氏

ゲスト講演Ⅱ
コクヨ株式会社 情報システム部 グローバルITグループ グループリーダー 土山 宏邦様

ヤマト運輸の現場力
ヤマト運輸株式会社
経営戦略部長 岡村 正氏

時代の環境に合わせた「未来の働き方」を追求し、自らの実践モデルを企業に提案し続けるコクヨグループ。かつて壮大なノーツ移行を行い、働き方変革を続け7年の時を経た今、時代の潮目を読み再び働き方の大変革に踏み切った同社の取り組みとは。“働き方先進企業”が考えるクラウドと、その効果的な付き合い方を事例を交えてご紹介いただきます。

パネルセッション
株式会社ドリーム・アーツ 営業統括本部 副本部長 事業企画部 部長 山本 ヒロシ

危機を乗り越える現場力
パネリスト : 望叶太郎氏、岡村正氏、山本孝昭
営業統括本部 副本部長 事業企画部 部長 山本 ヒロシ
モデレーター: 遠藤功氏