
最強の組織パフォーマンス論 Part II 組織が“本当”に変わる「場」づくり、社内 (インナー)コミュニケーション改革はここから始める
- 日時
- 2018年6月27日(水)
- 会場
- ライジング・スクエア SMBCホール
2018年6月27日(水)、ドリーム・アーツと東洋経済新報社で「働き方改革フォーラム2018」を共催いたしました。
本フォーラムは、3月に開催し好評いただきました「働き方改革フォーラム2018 最強の組織パフォーマンス論」の第2弾となります。
今回は、業務改革や社内コミュニケーション改善についてさまざまな企業・自治体を支援している、あまねキャリア工房の沢渡 あまね氏、オフィスに限定しないさまざまな領域から幅広く新たな「はたらく」を日々研究している、コクヨのワークスタイル研究所所長
若原 強氏をお招きし、社内コミュニケーションの活性化が導く意識改革・風土改革についてディスカッションをおこないました。また、社内ポータルやコミュニケーション活性化のプロジェクト事例として、プロジェクトを牽引した株式会社ジュピターテレコム(以下、J:COM)の執行役員
情報システム本部長 岡田 壮祐氏から改革の歩みについて、さらにプロジェクトメンバーの皆さまをまじえてプロジェクトを振り返ってお話しいただきました。ドリーム・アーツからは、「『働き方改革 × IT』の最前線」と題し、「働き方改革=生産性向上」を支える大企業向け次世代ソリューションと、ITを本当に活かすためのノウハウをご紹介しております。
大盛況のうちに終了した本フォーラムの様子をレポートします。

組織が“本当”に変わる「場」づくり
〜社内コミュニケーションの活性化が導く意識・風土改革〜
-
あまねキャリア工房 代表
業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士
-
コクヨ株式会社
ワークスタイル研究所 所長
-
株式会社ドリーム・アーツ
営業本部
アカウントエグゼクティブグループ
ゼネラルマネージャー
- モデレーター
ここでは社内コミュニケーションの活性化が導く意識改革・風土改革について、多面的な視点から幅広い事例を踏まえながら非常に濃い内容のディスカッションが行われた。ここではその概要をお伝えしたい。
沢渡氏は、生産性、組織と個人の成長、エンゲージメントの高い組織において、「ムリ・ムダ・おかしい」を「言える化」「見える化」することが、コミュニケーション活性化の鍵となっていることについて。また、若原氏からは、コクヨ様が働き方改革の取り組みとしておこなっている「場づくり」の観点から、本テーマについての考察と具体的な事例を紹介いただいた。

ディスカッションはモデレーターの栗木による「組織の取り組みに対するメンバーの意識は『2-6-2の法則』にあてはめて考えられます。問題意識を持って行動するのは上位の2割、課題に気づけていないのが中間の6割、そもそものやる気を持っていないのが下位の2割です。この構造に対して、どのように働きかけていくべきなのか」という、組織におけるメンバーの意識に関する問いかけから始まった。
応じて若原氏は、「“10”をすべて動かすのは難しい。機会を与えれば動いてくれる上位の“2”に働きかけながら、その影響でどれだけ“6”にいる人が動いてくれるかを、ひとつの指標にすると良い」と提案する。これに同意する沢渡氏も、「上位の“2”のモチベーションは保たせなくてはならない。“6”は、自らの意思でその立場にいるのか、チャンスがないのかに分けられる。『こんなチャレンジしていいんだ』『本音を言ってもいいんだ』
そこにミドルの“6”が気づき、上位の“2”のフォロワーが生まれてくれば徐々に組織風土は変わっていく。そのための、社内コミュニケーションをデザインすることがポイント。コミュニケーションはなかなか自然発生しない。きっかけづくり、仕組みづくりが重要となる」と応じた。
しかし、変える意思を持った社員がいても、トップに大きく変える気がないケースもある。これに対し沢渡氏は「社員の健全な問題意識と健全な成長欲求に向き合わない組織は、社員のエンゲージメントをどんどん低める」と経営層や管理職クラスに向けて警鐘を鳴らす。
「“働き方改革”はやらないでください」。
働き方改革をテーマにした講演で、しばしば耳にするフレーズである。このフレーズから栗木は、働き方改革とはなにか、そもそも本当に必要なのかという問題の原点に立ち返る。「目的を明確に定めることが重要。そもそもなんのために始めるのか、という目的を、途中でつまずいても立ちもどれる原点として設定する必要がある」さらに、「“コミュニケーション”という言葉で思考停止せずに、組織は目的について本気の議論をおこなっていく必要がある」という。
沢渡氏によると、コミュニケーション活性化のために必要なポイントは2つある。
ひとつはテーマ設定。「コミュニケーションを活性化させる」を一階層掘り下げて、「どういうコミュニケーションを目指すのか」といった具体性を持たせることが重要となる。
もうひとつが、きっかけづくりだ。社員の間にコミュニケーションが生まれるきっかけを与えなければ取り組みは前に進まない。
栗木の「Whyの観点においては“生産性向上”も掘り下げたテーマと言えるのではないか」という指摘に対し、若原氏はテーマや目標設定には粒度とアクションが起きやすいか、という重要なポイントを挙げる。沢渡氏も、社員を動かすためには、自分が得をするように動くという人の心理を利用したアクションにつながるテーマ設定が必要だという。また、不明瞭さや常識への固執といった、働き方改革の生産性を下げる要因を避けるためにも、目的は明確にする必要がある。
会場の参加者から寄せられた、ボトムアップによる働き方改革の成功事例についての質問に対し、沢渡氏は次のように答えた。「現場からの働き方改革も、取り組みやメンバーのモチベーションを継続させるためには、組織上層部の評価や認知が必要。そのために、外部の視点を入れることは有効な手段となる」。若原氏は「競合企業を引き合いに出すと、経営層の危機感を煽り、改革に対する意識を高めることができる」と提案する。
若原氏は、社内コミュニケーションを3種類に分類する。
社内で働く社員同士、社内で働く社員とオフィスの外で仕事をしている社員、そして、社員と社外の人との間のコミュニケーションだ。これらを活性化することで、業務効率化やオープンイノベーションといった機会の創出につながる。
オフィス環境を変え、仕掛けをつくることで部門を超えてちょっとした会話が生まれるきっかけができる。コミュニケーションには、チャットや休憩時の会話のようなインフォーマルなものと、会議やメールといったフォーマルなものがあり、イノベーションが生まれるのは、偶発的な出会いや会話から情報を得られるインフォーマルコミュニケーションがポイントとなる。Who
knows whatが社員間で共有されることで、組織の柔軟性が高まり生産性向上につながると、若原氏は述べる。
沢渡氏も、社外の人とのコミュニケーションの重要性について「一般的に日本人は自己肯定感が低く、社内に留まっていては気づけないことも多い。社内で評価されていないと感じていても、社外との交流を通して初めて自分の価値に気づけることもある」と重ねた。
こういった社内コミュニケーション活性化の具体的な手段として、若原氏は「未来のワークプレイス×食」を紹介する。
つくったのに使われていないカフェスペースやリフレッシュスペースを持つ企業は少なくない。この飲食という吸引力を、オフィスの入り口やミーティングスペースの近く、トイレに向かう通路の途中など、オフィスのどこに設けるかという導線の設定が重要だという。
沢渡氏も、社内コミュニケーション活性化のための方法を2つ挙げる。ひとつは、年代や性別、職種によって常識が違うのは当然だということを理解し、常識を疑うこと。もうひとつが、社員にお金をかけて、社員に対するリスペクトを示すこと。これらはいずれも社員のエンゲージメントに直結するポイントとなる。

ドリーム・アーツ流「働き方改革 × IT」の最前線
- 株式会社ドリーム・アーツ
営業本部
アカウントエグゼクティブグループ
ゼネラルマネージャー
国内さまざまな企業が働き方改革の取り組みをおこなっています。しかし、取り入れた制度がうまく機能しなかったり、逆に業務負担が大きくなったりと、働き方改革に対する世間一般の印象は、あまりポジティブなものではないかもしれません。
しかし、そのような印象があるなかで、私は働き方改革に成功した事例を見てきました。では、どんな企業が働き方改革に成功しているのか、ITの観点からお話しします。
これまで、ビジネス戦略において日本企業は3つの段階を経てきました。
ひとつは、業界が安定しているなかで各企業が非競争的な戦略をとっていた「業界内緩やか差別型」。
そして、それぞれの企業が差別化を意識し、業界内の競争が激化した「業界内切磋琢磨型」。
しかし現在の日本は、労働人口が減少する一方で消費者のニーズは多様化し、これらの戦略が通じない状況にあります。それが、新規参入企業の増加により業界横断で競争が激化する「異業種格闘技型」です。
こういった環境のなか、従来の働き方では激しい競争を生き抜くことはできません。そこで、企業の働き方改革が死活問題となるのです。
では、働き方改革を始めるにあたって、どこから着手していけばよいのでしょうか。
働き方改革には3つの主要要素があります。働く時間や場所、人事に関わる「制度」の改革。自動化で人の業務を支援する「道具」の改革。そして、戦略を転換し組織力を向上させる「風土」の改革。いずれも「人」に関わる領域ですが、人を動かし改革を具現化する土台となるのは「風土」の領域です。
フレデリック・ラルーが提唱する「ティール組織」には、「衝動型組織」「順応型組織」「達成型組織」「進化型組織」という組織における進化論的な流れがあります。現在の日本企業の風土は、これら4種類のうち順応型、達成型、進化型のいずれかに分類され、それぞれが柔軟性や安定性に関する志向、組織内外への関心度などにより特徴づけられます。とはいえ、組織全体としてだけではなく、組織内の部署の役割によっても風土は異なるはずです。したがって、組織風土とは、目指す組織の姿に最適な風土を能動的につくるべきものであると言えるでしょう。
しかし、人は感情で動く生き物。命令やルールを変えるだけでは能動的な行動を引き出せません。そこで鍵となるのが、コミュニケーションを通して本人に腹落ち感を持たせることによる「内なる動機付け」です。
ITツールによるコミュニケーション基盤を引き金にして、コミュニケーションを活性化させてみてください。コミュニケーションと社員の行動・意識は密接に結びついています。能動的な行動を促すことができれば、その繰り返しにより意識が変化します。すると、業務の量と質が転換し能力が向上します。社員の行動と意識が変わり、組織の風土醸成につながるのです。
現在、メールやチャットなどコミュニケーションツールは十分にそろっています。しかし、その活用には課題を感じている組織が多いのではないでしょうか。それは、ツールの対象範囲が狭いことに原因があります。組織風土を動かすようなコミュニケーション基盤には、組織全体に浸透する仕組みが必要です。
ポータルは、そういった風土づくりに最適なコミュニケーション基盤であると言えます。社員を主役とした改革で組織のベクトルをあわせ、組織風土を醸成し、その組織のロールモデルとなる考動を浸透させる。このサイクルを、ポータルを土台にして回すことで、働き方改革を成功に近づけることができます。
このようなIT導入による働き方改革を成功させるためには、
- 影響力のある経営層と情熱を持ったリーダーを含む「強力な改革チーム」
- 必要なものをうまく活用するための「ツールとルール」
- 関係者の想いを形にする「改革ステップ」
これらがそろっていることが前提となります。そこから、組織の形にあったコミュニケーションをデザインしていく。これが、私がこれまでお客さまのお手伝いをするなかで発見した、成功する働き方改革の鍵です。この後のセッションでは、まさにその事例のひとつであるJ:COM様のポータル刷新プロジェクトをご紹介します。


働き方改革、情報管理、社内コミュニケーションの向上を目指す社内ポータルの改革
- 株式会社ジュピターテレコム
執行役員
情報システム本部長
J:COMは、創立以来M&Aを繰り返し、組織規模が大幅に拡大しました。高付加価値のサービス提供により増収増益しましたが、10年前に比べて従業員数は2倍、拠点数は3倍に増加。2018年現在、グループ従業員数は17,000人を超え、全国におよそ120の拠点があります。これに伴い組織として課題となっていたのが、社内コミュニケーションです。
当社では2007年以前は、社内コミュニケーションの手段はメールが中心でした。そこで2007年に、情報システム本部が中心となり、全社向けの掲示板と発信組織ごとのポータルを作成し提供しました。一方、中身の運用については各部に任せるという形で運用を開始しました。必要な情報の共有と検索が1ヵ所でできるようにと考えてつくったポータルでしたが、問題は文書のライフサイクルを考慮できていなかったことです。
各部のメンバーが文書を部署ごとの基準で登録していったため、どれが最新版かもわからず、整理されていない膨大な数の文書から必要とする文書を探し当てなくてはならないといった状態になってしまいました。結果、情報発信をメールに頼ることになり、今度はメールの処理が日々の業務を圧迫するようになっていきました。

そこで、情報発信手段、情報へのアクセス手段を最適化し、業務の効率化を進めることが重要だと考えました。同じ想いを持つメンバーを集めて始動したのが、「4 Circle プロジェクト」です。CEO室がコミュニケーション活性化、管理本部が情報管理の徹底、情報システム本部がシステムの整備、人事本部が働き方改革と、参画した部門がそれぞれの目的・テーマを持ち、コミュニケーション活性化による無駄の削減で収益向上に貢献するため、協働して取り組みを進めていきました。
そこで中心となる社内ポータルを、いかに改善するか。検討候補としていくつかのツールをあたっていきましたが、Office365の導入が決定していた私たちには、SharePointを勧めてくる企業がほとんどでした。そんななか、ドリーム・アーツはポータルに掲示する情報をどのように設計し、どうやって全社員に浸透させるべきかを提案してくれました。単に箱を作るのではなく、中身やリリース後の運用を考え構築を行わなくてはならない、という教訓を旧ポータルの反省から得ていた私たちは、ドリーム・アーツからの提案を採用することに決めました。
このような経緯で始まったプロジェクトですが、熱意を持たずに進めては、また魂のないポータルをつくる羽目になってしまいます。そこで、最初につくったのが「わくわくルール」です。「わくわくするようなポータルをつくる」を目標に、活発なディスカッションと熱意によって良いものをつくるためのルールを設定しました。
こうしてできたのが、新ポータル「J:METIS」です。「J:METIS」には現在2種類のポータルがあります。ひとつが、「全社員が想いをひとつにして、明日のJ:COMを創ろう!」というコンセプトで作成した全社ポータル。社員の想いを同じ方向に向けられるような内容の記事を掲載しています。もうひとつが「ここに来れば、だれでもどんな手続きも一発でわかるポータル」を目指した手続きポータルです。J:COMは中途入社の社員が多く、それぞれが必要な手続きについての情報を簡単に見つけられる場が必要でした。
このふたつのポータルをもって「J:METIS」は全社公開となりましたが、まだプロジェクトは終わりではありません。タイムリーなKPI情報の共有や現場発信のメッセージの集約に活かせるポータルを目指して、今後もドリーム・アーツとともに「J:METIS」完成に向けて取り組んでいきたいと思います。

現場の「やりたい!」と「意識共有」をITでデザインする
〜改革の責任者とメンバーが語る、
20の部門が参画した社内協業横断プロジェクトのウラ側〜
- 株式会社ジュピターテレコム
執行役員
情報システム本部長
- 株式会社ジュピターテレコム
CEO室
広報部
マネージャー
- 株式会社ジュピターテレコム
CEO室
広報部
マネージャー
- 株式会社ジュピターテレコム
管理部
アシスタントマネージャー
- 株式会社ドリーム・アーツ
営業本部
アカウントエグゼクティブグループ
ゼネラルマネージャー
- 聞き手
- 株式会社ドリーム・アーツ
CTサービス本部
グループマネージャー
- 聞き手
このディスカッションでは、担当営業 栗木とプロジェクトマネージャー 高力が聞き手となり、J:COM様の社内ポータルサイトの構築に参加されたメンバーの皆さまに、プロジェクトを振り返りながら経緯や効果についてお話しいただいた。
- 栗木
- さまざまなバックグラウンドを持った社員がいるなかで、ポータルを刷新し、社内コミュニケーションを改善する必要性を見いだしたきっかけはなんでしたか?また、具体的にどのような効果を期待したのでしょうか?
- 大屋氏
- ほかの部門のことを知らない社員が多い状況に気づき、その現状に疑問を抱いたのがきっかけでした。さらに、異業種格闘技型の戦略が必要になる時代にイノベーションを生むためには、部門の垣根を超えた相互理解と全社のベクトル合わせが必要だと考えました。
- 栗木
- プロジェクトの立ち上げで、部門を超えて25名ものメンバーを招集しましたが、これだけの人数を集めたのはなぜですか?
- 岡田氏
- 旧ポータルをつくった際には、協力を依頼した各部門に対する動機付けが弱かったという反省がありました。そこで今回は、ポータルの中身をどうするのか、という議論が必須だと考えたのです。本部長が集まる会合でなぜ、なにが必要なのかを訴え、経営陣の後ろ盾を得て各部門からメンバーを集めました。
- 栗木
- プロジェクト立ち上げ時には、市川さんはメンバーに入っていませんでしたが、どのような経緯で参画を決めたのでしょうか?
- 市川氏
- 管理部に配属されて、あらためて社内の状況を客観的に見たとき、情報管理が雑多で属人化していることに気づきました。それをなんとかしたいという想いがあり、近くの席にいた大屋さんに声をかけていただいたのがきっかけでした。
- 大屋氏
- 私が入社した際も、ひとつの手続きの方法を探すだけで何時間もかかってしまう、という状況でした。ところが、市川さんから、その情報を主管する部門ですら情報の見える化ができていないと聞いて愕然とし、プロジェクトに誘いました。
- 市川氏
- 岡田さんや大屋さんから、プロジェクトに対する熱意とリーダーシップを感じたことも参画を決めた理由のひとつです。
- 栗木
- 熱い想いを持ったメンバーが集まったプロジェクトチームになったようですが、プロジェクトマネージャーとしては、これだけのメンバーに集まってもらったことのメリットには、どのようなものがありましたか?
- 高力
- 各部門でやりたいことや優先したいことより、そもそもなぜポータルを刷新するのか、という目的を明確に浸透させることができたと思います。それにより、目的ベースでディスカッションをおこなうことができ、意思決定のプロセスがスピーディーになりました。
- 栗木
- 熱い想いを持った人が集まることで、気づきが増えるということもあるのでしょうね。
しかし、それぞれメインの業務が忙しいなか、追加のプロジェクトに参加いただくとなると、社内の調整や説得なども難しかったのではないでしょうか? - 岡田氏
- 社内での根回しは必要でしたが、一度説得できたら、あとはその勢いをいかに形にするのかが重要であるというのは当初から感じていました。実際に集まってみると、それに適したメンバーという印象でした。

- 栗木
- 集まったからとはいえ、順調に進むのかという不安はありませんでしたか?また、J:COM様は今回のプロジェクトで、全社ポータルと手続きポータルという、2種類の異なる機能を持たせたポータルをつくられました。この2種類のポータルには、それぞれに独自の役割がありますね。
- 瀬塚氏
- 旧ポータルの課題を踏まえて、企画・要件定義段階からユーザー部門を巻き込めたことで、みんなの魂を込めて良いものをつくりあげられたと思います。全社ポータルについては、それぞれの角度から見た課題を整理し意識を統一したことで、議論のなかで各部門の要望から要件が肥大化しても、そのコンセプトに立ち返ってあるべき姿を描くことができました。
- 市川氏
- 手続きポータルについては、手続きに関する業務や運用の見える化が進んでいないことが大きな課題でした。社員側に対してだけではなく、総務担当者間にも見える化が必要でした。そこで「総務グループの人数をゼロにする」ことを目標に見える化を進めようと考えました。以前は、ひとつの手続きについて、社員があらゆるところを探す長旅をしているような状態でした。解決策を見つけるまで何日もかかっていたこともあったのです。それを迷わずに瞬時に見つけられるようにすることで、社員は総務に問い合わせをしなくても、なにをすればいいのかわかる、総務の主担当者以外も、サイトからなにを対応すればいいかわかる…。そこをゴールにしたのです。
- 栗木
- 手続きポータルについて市川さんが掲げた「情報検索の無駄な旅から社員を解放する」のように、コンセプトやスローガンを設定する際、人の様子を具体的にイメージできるようなものであることが大事だと思います。それによりイメージしたものに向かって、社員のベクトルをあわせることもできるのでしょうね。
- 高力
- 今回の5ヵ月にわたるプロジェクトでは、実装はシンプルに、という前提で3ヵ月をコンセプトづくりや要件定義に費やしました。メンバーのみなさんが目的達成の手段としてのITという考えを理解されていて、優先すべきところを最初の段階で決められたので進めやすかった印象です。そういった意思の統一がプロジェクトのスムーズな推進に大きく影響したのだと思います。
- 栗木
- その結果として出来上がった新ポータルを全社に浸透させていていくために、どのように社内プロモーションをおこなったのでしょうか?
- 岡田氏
- まずは経営会議で、ポータルの整備でどう生産性が上がり、どのような効果が期待できるのかを説明し納得してもらいました。トップからのお墨付きもいただき、そのあとはスムーズに進められました。
- 大屋氏
- とはいえ、それを現場の社員にもきちんと認知してもらうためには工夫が必要でした。社内報で2回に渡ってこのプロジェクトを紹介する機会を設けました。また、各本部の担当者に対してリリース前に十数回にわたり説明会を開催し、担当者から部門内への説明をお願いしました。
- 栗木
- では最後に、現時点で、そもそもの目的であったコミュニケーションの改善や風土改革、業務効率化は進んでいると感じますか?
- 市川氏
- 手続きポータルで情報を一元管理することにより、社員が自分で手続きの方法を見つけられるようになり、総務はだれでも対応方法がわかるようになりました。社員からの問い合わせ数も劇的に減ったのです。今後も、新しい問い合わせが来るたびに都度ポータルに追加しているので、さらに業務が改善されていくと思います。
- 瀬塚氏
- プロジェクトメンバー以外にも、フォーマルからインフォーマルな情報共有へのシフトの兆しが見られます。以前は発信者視点で作成されていたコンテンツを、わかりやすく、読みたくなるような見る側の視点で各部門が考えるようになってきています。また、旧ポータルサイトがトップダウンの情報発信であったのに対し、ボトムアップで情報発信をしたいという声もあがってきており、変化が起きていることを感じます。
- 岡田氏
- 最終的に目指しているイメージに到達するまで、やることはまだたくさん残っています。発信した情報に対して反応が返ってきて、そこから新しいイノベーションが生まれる、という形を実現するのはまだ難しいですが、現場から情報があがってくる、という状態に向かって進み始めているのを感じています。

- 改革を進めていくうえで、トップマネジメントをどう動かせば良いか勉強になりました
- 「働き方改革」というフレーズが先行していて思考停止状態のなか、社員に浸透させ、主体的に働いてもらうためのヒントを得られました
- ITを引き金に行動を起こすという考え方が参考になりました
- ポータルの意義を再認識しました。自社でも参考にしたいです
- 部門横断のプロジェクトとして事例が大変参考になりました
- コンセプトや目的の設定の仕方が働き方改革を進める際の参考になりました
ドリーム・アーツは、これからもお客さま、パートナーさまとの「協創」を推進し、信頼していただける企業を目指してまいります。