

第5回 ドリーム・アーツ エグゼクティブカンファレンス建設的対立 -Constructive Confrontation-
- 日時
- 2017年8月2日(水)
- 会場
- 恵比寿 ザ・ガーデンホール
2017年8月2日(水)、「第5回ドリーム・アーツ エグゼクティブカンファレンス」を、恵比寿 ザ・ガーデンホールにて開催いたしました。今年のカンファレンステーマは「建設的対立(Constructive Confrontation)」。特別対談として、2012年ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥教授と、トーンキュンストラー管弦楽団音楽監督、兵庫県立芸術文化センター芸術監督を務め、「サントリー1万人の第九」の総監督・指揮でも知られる佐渡裕氏をお迎えいたしました。また、基調講演では、現場力の第一人者で、ドリーム・アーツ社外取締役の遠藤功氏にお話しいただきました。大盛況のうちに終了したカンファレンスの様子をレポートいたします。

ドリーム・アーツ セッション
- 株式会社ドリーム・アーツ 代表取締役社長
今年のテーマは「建設的対立(Constructive Confrontation)」です。昨年は「有機主義」というテーマでしたが、そのときから今年のテーマは「建設的対立」と決めていました。
まずは昨年のテーマ「有機主義」について、最近はテクノロジーだとかロジック、ストラテジーといった、木に例えると枝ぶりがどうだとか、実がどうなっているとか、そのような話ばかりです。しかし、本質的に大事なのは木の「根っこ」の部分です。木(植物)に例えると、細胞というのはひとつひとつがすごく小さくて儚くて弱いものですが、「調和」し「均衡」し「連携」することで、アスファルトをぶち破るくらいの力を持ちます。会社・組織もそういう有機的な存在です。去年はそのようなメッセージをこめて、このテーマで開催させていただきました。

そして今年のテーマである「建設的対立」です。会社をもっと有機的な組織にしなければならないと考えているなかで、次のステップとして、「皆で本気で協創し、本気で挑戦し、本気で突破しなければならないとき、安易な平穏や、薄っぺらな和に平伏せば、本物の調和・均衡・連携は得られない」と考えています。
明治維新から150年、日本は大転換期にきています。日本中の財とインテリジェンス、パッションなどを東京に一極集中させ、先行している欧米の事例を参考にプロジェクトを仕立てる。今まではこの方法で大成功をおさめてきました。しかし、今は、激変・不透明・不安定・猛スピードの、「やってみなければわからない時代」にきています。このような時代には異なる才能、異なる感覚がぶつかり合う「建設的対立」なしで新しいアイデアを創造することは難しいのです。
このような流れのなかで「働き方改革」が叫ばれています。ドリーム・アーツは、大企業・大組織向けにITソリューション、サービスを提供させていただいています。そのなかで、十数年も前から変わらずこだわってきているのは「良質なアナログ時間」です。ITでできる仕事はITに任せて、私たちは本来人間がやるべきことに集中する。つまり、現場に行ってみる、本人に会ってみる、現物にさわってみる。行ったつもり、会ったつもり、わかったつもり、ではなくて、実際にやってみる「アナログ時間」を大事にしたい、大事にしてほしいという想いでやってきました。

ITはますます多くの便利を提供し、私たちを楽にしてくれます。しかし、テクノロジーを無防備に使うことで、“無駄”や“余計”が膨大に生みだされ、結果的に、時間が奪われる危険性があります。やはり、現地、現物、現実、そして本人に直接ふれる時間、「アナログ時間」がこれまで以上に大切になり、調和・均衡・連携に高いレベルで取り組まなければならないときがきたのだと思います。
私たちドリーム・アーツは皆さまに、有機主義であり建設的対立を実践するための「良質なアナログ時間」の創出に貢献するITソリューションを、ご提供していきたいと考えています。ときにはとことん本気でアイデアをぶつけ合い、ぶつかり合うという「建設的対立」をもって、高いレベルの調和・均衡・連携を実現させましょう。

建設的対立Constructive Confrontation
- ファシリテータ:株式会社ドリーム・アーツ
代表取締役社長
- 京都大学iPS細胞研究所所長・教授
2012年ノーベル生理学・医学賞受賞
- トーンキュンストラー管弦楽団音楽監督
兵庫県立芸術文化センター芸術監督
- 2012年ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥教授と、世界的指揮者の佐渡裕氏という、プライベートでも親交のあるお二人を迎え、ノーベル賞授賞の裏話やバーンスタイン氏との貴重なエピソード、研究所やオーケストラのマネージメントや次世代の育成にまで話題が広がった「特別対談」についてレポートする。
世界で活躍されるお二人の登場に会場が沸くなか、この企画のために準備された徹子の部屋風のセットで対談はスタート。まずは、ミスター・ラグビーと呼ばれた故・平尾誠二氏を介した山中教授と佐渡氏との出会いに始まり、今では、会うのはもっぱらお酒の席とゴルフのときで、お互いの仕事の話はほとんどしないという、ある意味、馬が合うからこそ自然に親交が深まったのだと感じられるお二人のエピソード・トーク。ご持参いただいた想い出の品や写真を見ながら、ノーベル賞受賞後やiPS細胞のいま、「サントリー1万人の第九」についてなど、近況を交えつつ、この場だからこそ聞ける貴重なエピソードが次々と披露された。
組織をマネージメントするということ
お二人のトークで会場も温まってきたところで、話題は「組織のマネージメントについて」へ。山中教授、佐渡氏のお仕事と一般的なビジネスのマネージメントに共通項はあまりなさそうだが、実は、片や600人以上の研究者を抱える研究所の所長であり、片や世界中のオーケストラを束ねる指揮者として、異なる世界でありながらトップレベルの組織をマネージメントしている。そんなお二人は、組織のマネージメントをどのように実践してきたのだろうか。
約20年前に自分の研究室を初めて持った山中教授は、年齢の離れた部下たちにどう接すれば良いのかわからなかったという。そんなときに出会ったのが、井村雅代氏(現シンクロナイズドスイミング日本代表ヘッドコーチ)の「愛があるなら叱りなさい」という本だった。そこに書かれていた、「叱る基準は一緒」「だれに対しても同じ基準で同じように叱る」ことは、普段から意識しているそう。
一方、佐渡氏は、伝統あるウィーンのオーケストラと、12ヵ国のメンバーが在籍する新しいオーケストラという対極的な場所での活動から、「叱るというよりは指摘する。

指摘し改善するためになにをドリルとして与え、こういう結果になる、というところまで説明する」という。個性的なメンバーが集まった組織をいかに向上させるかを考えぬいてきたからこその貴重な言葉だ。また、佐渡氏が熱意と愛情を注ぐ、小学生から高校生までで構成される「スーパーキッズ・オーケストラ」での経験から、「ぼく自身にパッションがなかったら、彼らにもパッションは生まれない。だから彼らの前で適当なことをしたら、ぜったいに適当なことしかしない。これは子どもでも大人でも一緒」と、大人でも子どもでも相対すると自分の姿を映しだす鏡だと例えた。

次世代の育成について
- 組織をマネージメントすることから、話は自然と人材の育成や教育に及んだ。かつてないほど人材難が深刻化する日本のビジネスの現場。世界トップクラスの現場で戦うお二人は、次世代の育成について、どのように考えているのだろうか。
「30代くらいまでは、食べていくことで頭がいっぱいで、次の世代のことなんて考える余裕はなかった」と佐渡氏。しかし、小澤征爾氏、レナード・バーンスタイン氏という最高の指導者に出会い、次の世代の育成について考えるようになったという。特にバーンスタイン氏の最も誇りにしている仕事が、「Young People’s Concert」という子どもたちのための企画だと知ったことで、「育成は人としてやらなければならないことだ、と思うようになった」と語った。
一方の山中教授は、「研究所の次のリーダーを育てることは絶対に必要だが、育成には日々悩んでいる」という。山中教授のもとに集まる人ともなると、勝手に勉強して勝手に成長するように思ってしまうが、なかなかそうはうまくいかないそうで、どこの世界であっても育成に関する悩みは尽きないようだ。

その後も、山中教授が実感する日本とアメリカの環境や人材の違いと、その違いを踏まえたチームの育てかたや、佐渡氏の指揮者としてすべきことなど、分野は違えども私たちのビジネスの現場にも通じる話が次から次へと展開され、予定時間を大幅に超える盛りあがりを見せた対談となった。最後には、佐渡氏から「感謝力が1.5倍あるやつは、実力も運も努力も1.5倍になるし、2倍あるやつは2倍になる!」と熱いパッションを感じるメッセージをいただき、大盛況のうちに対談は幕をおろした。

マイクロソフトとの戦略的提携
- 日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務
デジタルトランスフォーメーション事業本部長
- ドリーム・アーツとマイクロソフト協業:マイクロソフト執行役員 伊藤 かつら氏 エンドースメント
マイクロソフトは、WindowsやOfficeという製品を提供している会社というイメージを持たれる方も多いと思いますが、今、テクノロジー業界はものすごい変革が起きており、私どものビジネスの中心は、Windows/Officeから、クラウドのAzureと人工知能(AI)に大きくシフトしています。会社全体で大きく変革をしようとしていくなかで、ドリーム・アーツにはビジョンとテクノロジーを評価いただき、いち早くAzureとAIを採用していただいたことを大変ありがたいと思っています。昨今話題の「働き方改革」ですが、どうしてもワークスタイル変革、テレワーク、残業規制などのように「形」から入りがちです。
しかし、この形、実は重要なことが成し遂げられていないと実現できません。それはなにかと言うと、すべての業務、文書、プロセスの電子化です。ドリーム・アーツは、今まで難しいと思われていた非定型の業務を上手にデジタル化できるソリューションを提供しています。ぜひ私どももドリーム・アーツと一緒に働き方改革を進めていければと思います。


「建設的対立(Constructive Confrontation)」をいかに育てるか?
- 株式会社ローランド・ベルガー 会長
株式会社ドリーム・アーツ 社外取締役
- 今回のテーマである「建設的対立」が、なぜ必要とされ、どうすれば実現できるのかを、「現場力」の権威である遠藤氏に語っていただきました。
建設的対立こそが未来創造の道
今、私たちのビジネスの世界で、「建設的対立」が頻繁に起きているでしょうか。人と人が前向きな気持ちで衝突して、そこからなにか新しいものを生みだそうと100%のエネルギーでやっていることはあるでしょうか。ビジネスのなかで建設的対立をすることは、あたりまえのことです。意見と意見がぶつかりあうところからしか、新しいものは生まれてこないからです。にもかかわらず、建設的対立が起きにくい会社になってしまっている。だから意図的に建設的対立を育てなければならないのです。さて、どうすれば「建設的対立」は育つのでしょうか。
今、乱気流が常態化した先が読めない時代のなかでビジネスをしなければならない。先が読めないのであれば、未来は自分の手で作るしかない。「自分たちはこうありたい、というものを自分たちで描いて自分たちで作ってきた企業しか、勝ち残れない時代」になります。

会社のなかでいろいろな意見をだしあって、熱く議論し、最適な仮説を導きだして、即やってみる。それを絶え間なく繰り返す。これしか生き残る方法論はないと思います。仮説どおりにいくかどうかもわかりません。でも試してみないとわからない。だれか一人の意見に従ってそれが正しいという保証はないわけです。建設的対立こそが未来創造の道なのです。
なぜ建設的対立ができないのか
建設的対立ができる会社が少ないのには、いくつか理由があります。
ひとつは「同質化」することです。社内が同じ考え方、同じ思考パターンになってしまうと建設的対立は起きません。
ふたつめは、「思考停止」していることです。なにも考えていない人どうしで建設的対立は起きません。大事なのはそれぞれの人が、結論はわからないけれども、それぞれの立場で自分の判断、意見、意志というものを持つということです。
最後は「言えない化・言わない化」です。いくら多様な人材を入れても、自分で考えるようにしても、そもそも言えないような風土になってしまっていたら、建設的対立は起こり得ないのです。
創造するためには「仕事改革」が不可欠

なによりも大事なのは、挑戦→実践→創造のための時間を生みだすことです。日本の会社にはお金を生まない価値のない仕事が多すぎます。仕事のありかたを徹底的に議論・建設的対立をし、メスを入れなければ、その仕事がなくなることはありません。仕事を継続的に「断捨離」しなければ、生産性は永遠に高まりません。仕事改革には3つの論点があります。
ひとつは「滞留の撲滅(意思決定・判断の滞留)」です。製品の在庫に目が向きがちですが、意思決定にも在庫があります。大企業になればなるほど、滞留が生産性に悪い影響を与えます。
次に「ムダの撲滅(価値のない仕事の一掃)」。会社には価値のない仕事がたくさんあります。ムダじゃないと思っている人がいるから、ムダの定義が会社によって人によって違うから、ムダがなくならない。
最後が「過剰の撲滅(お金を生まない過剰の適正化)」です。日本の企業というのは現場力が高くて、過剰品質や過剰サービスになるわけです。もちろんお金をいただけるのであれば良いです。お金がもらえないから過剰なのです。
この3つの論点にそって仕事を棚卸しして、改革のポイントがどこにあるのかを洗いだす必要があります。こういう仕事改革をするうえでも、建設的対立というのがとても大事になります。

絶え間なく挑戦し、絶え間なく実践し、絶え間なく創造する会社は「生きている」会社です。会社は常に自己否定し、自己変革し続けることが求められます。自己否定するためには、建設的対立をいかに大事にしていくか、これがあって初めて創造できるのです。「建設的対立」を生みだす唯一の方法は、「建設的対立」を楽しむことしかないと思います。建設的対立を楽しむ。この対立が未来を作っていくのだと考えていただいて、ぜひ、会社をそういう土壌にしていただければと思います。

夏祭りを模した懇親会は、日本マイクロソフト執行役員 常務の伊藤かつら氏による乾杯のご発声で始まりました。生ライブを楽しみながら、お客さま同士でご歓談とお食事、情報交換をされている姿が見られました。多くのお客さまにご参加いただき、盛大な会となりました。
- 新たな価値創造が現場から生まれるよう、創造とトレードオフになっている「時間を奪う仕事」をなくしたいと思いました。
- 山中教授と佐渡氏の話をライブで聞くことができ、“本物に触れる”ことの大切さを改めて感じました。
- 社内で判断コストの話をしたところでしたので、遠藤先生の仰った「意思決定の滞留撲滅」には唸りました。
- 組織が生命体であることは忘れがちです。自社を「死んでいる会社」にしないよう、創造が現場から生まれるようにしたいと思いました。
今後ともドリーム・アーツをよろしくお願いします。 〜ドリーム・アーツ一同〜