YebisuLab<えびすらぼ>
YebisuLab<えびすらぼ>

YebisuLab<えびすらぼ>

より創造的なチーム環境を実現するべく始まったワークショップシリーズ「Yebisu Lab<えびすらぼ>」。ファシリテーターは、『IDEA HACKS!』『TIME HAKCS!』などの著者・小山龍介。企画に賛同していただいたDream Artsさんのサポートをいただき、ワークショップがスタートしました。

第一回「情報の組み合わせ方を体感する」

より創造的なチーム環境を実現するべく始まったワークショップシリーズ「Yebisu Lab<えびすらぼ>」。第一回は、発想を広げるために必要な思考方法について体験して学ぶ、「情報の組み合わせ方を体感する」ワークショップです。ファシリテーターは、『IDEA HACKS!』『TIME HAKCS!』などの著者・小山龍介。企画に賛同していただいたDream Artsさんのサポートをいただき、ワークショップがスタートしました。

アイデアは既存の情報の新しい「組み合わせ」

ワークショップはまず、「共通点探し」のゲームから始まりました。初対面の二人が一組になり、お互いの共通点をできるだけ多くあげていく。緊張を解きほぐすアイスブレーク※1のゲームですが、そこにはこんな意図も隠されていました。

小山「相手のなかから自分とつながるような情報を見つけ出す。そこに驚きがある。『実家がとなり駅同士だった』とかね。アイデアのもっとも素朴な形があります。自分では当たり前に知っている情報が、『共通点』というかたちでつながると、新鮮に感じるんです」

アイデアだからといって、まったく何もないところからつくるのではなく、情報の組み合わせなのです。

※1アイスブレーク
緊張を解きほぐすためにおこなうゲーム。ブレーンストーミングなどのアイデアを生み出すための打合せは、堅くなってしまってはおしまい。ゲームやジョークなどからスタートして、「どんなバカげたアイデアを言ってもOK」という雰囲気にすることがポイント。

豊かな質感、クオリアに着目する

ここから、ワークショップに入っていきます。発想力を広げるために重要なのは、「目に見えないものに着目する」こと。それを体感してもらうために、「ものの言い換え」などの課題に挑戦してもらいました。

小山「アイデアの根底にあるのは、体験。それは目に見えない。きれいな音だとか、いいにおい、すべすべとした肌触りなどの、感覚の組み合わせなんです。そうしたクオリア※2にあふれた体験をどう意識するか。そこにも、感覚をどう組み合わせていくのか、組み合わせの妙があります」

ビジネスの世界で忘れられがちなクオリア。これをどうビジネスに取り入れていくか。そこには複雑な組み合わせを作り上げる発想力、想像力といった高度な思考が必要になります。

小山「たとえば、情報の分母を入れ替えてみる。たとえば、シェフによる調理という分子に対して、『対戦』という分母をおいてみる。そうすると『料理の鉄人』という番組※3になる。そうやって分母を入れ替えることで、いままでのシェフ像が劇的にかわるんです。これもまた、新しい組み合わせによってアイデアを生み出す手法です」

※2クオリア
感覚に伴う豊かな質感のこと。「あのブランドの信頼できる感じ」や「ケータイの手触り感」など、ビジネスの世界にもクオリアがあふれている。

※3テレビ番組
テレビ番組は、情報の新しい組み合わせの宝庫。いままで見慣れていた情報をいかに新鮮なものに変化させていくか。情報の再発見ともいうべきプロセスには、アイデア発想の方法論がたくさんつまっています。

発想の「型」を共有する

つづいて、新規ビジネスのアイデアを考えるグループワーク。しかし、ただ「考えてください」というだけでは、アイデアはでてきません。そこで、あらかじめ「二つの会社を組み合わせてできる新しいビジネス」という、発想の型※4をきめました。

小山「アイデアをだす会議で大切なのは、方法を共有すること。勝手気ままにアイデアをだすのではなく、全員が同じ方法を使って作業することで、アイデア発想の効率も格段に上がります」

参加者が方法を意識しておくことで、沈黙してしまう会議、声の大きい人が主導権を握ってしまう会議がなくなります。このワークショップでも、ディスカッションは大きく盛り上がり、たくさんの面白いアイデアが生まれました。

※4代表的な情報の組み合わせ方

ここでは、2つを組み合わせて新しいビジネスを考える型を利用。編集工学研究所では、5つの思考の型を提案しており、これはその中のひとつです。
第一回ワークショップポイント!
アイデアは、既存の情報の新しい組み合わせ。組み合わせ次第で、情報は面白くなる。
体験の組み合わせであるクオリアを意識する。
組み合わせの「型」を共有して、創造的な会議を運営する
第二回「ビジネスでの『オシムジャパン』をつくる」

より創造的なチーム環境を実現するべく始まったワークショップシリーズ「Yebisu Lab<えびすらぼ>」。前回の「情報の組み合わせ方を体感する」ワークショップにつづいて、今回はチームワークをテーマにした「ビジネスにおける『オシムジャパン』をつくる」ためのワークショップをおこないました。ファシリテーターは前回に引き続き、『IDEA HACKS!』などの著書で知られる小山龍介です。

ストライカーはたくさん要らない

ワークショップがおこなわれた6月3日は、ちょうどサッカーのキリンカップ※5開催の真っ最中。2日前には、モンテネグロに勝利を収めたオシムジャパンの話題から入りました。

小山「もしストライカーしかいないチームを作ったら、チームは機能しません。オシム監督は『ファンタジスタはいらない』という表現をしていますが、エースだけでは試合に勝てないのです。だから、DF(ディフェンダー)やMF(ミッドフィルダー)など、役割分担をしながら、それぞれが自分の果たすべき役割を果たす、チーム全体としてのバランスを考えなければなりません」

チームとしてのバランス。これはサッカーに限りません。ビジネスの現場においても、「エースばかりがいて立ち行かないチーム」や「誰も決定を下そうとしない、決定力不足のチーム」があるはずです。こういうとき、ひとりひとりのスキルが問題ではなく、チームとしてのバランスが問題なのです。

※5キリンカップ
モンテネグロ戦はエース高原のゴールなどがあり、2-0と快勝。コロンビア戦でもすばらしい連携で0-0と引き分け、日本代表は優勝を飾った。

豊かな質感、クオリアに着目する

ここでまず、あるテストを参加者全員にうけていただきました。これは「ハーマンモデル」※6と呼ばれるテストを簡略化したもので、その人が脳のどの部分をよく使っているかが分かるものです。

ハーマンモデルでは、脳を四つの部位に分けて考えます。軸となるのは、左脳と右脳、それから新しい脳(大脳新皮質)と古い脳(辺縁系)のふたつ。これがマトリクスとなります※7

このうち、どこをより多く使っているかによって、その人の思考特性が見えてくるのです。たとえば、右脳の新しい部分を使う人は、直観的で新しいアイデアを生み出すアイデアマンであることが多く、また、右脳の古い部分を使う人は情緒的で、人間関係の達人である、といったもの。

人は通常、脳の使い方が偏っています。サッカーが、DF、MFというように得意分野をそれぞれが果たしているように、ビジネスにおいても、それぞれの分野で、得意な人が分担するとスムーズにいくのです。

※6ハーマンモデル
ハーマンモデルとは、ノーベル賞受賞学者の大脳生理学理論を起源とする「脳」の研究をベースにした科学的ツール。

※74つの脳のマトリクス
自分の特性と正反対の思考は、苦手であることが多い。たとえば論理的な思考をする人は、人の感情を理解しにくい、など。だから、補完しあう関係が必要なのだ。

チームの中で脳のバランスをとる

ワークショップではテストの結果を踏まえて、バランスがとれるようなチームを作ってみました。たとえば、メンバーに右脳の新しい部分の強い人がいれば、反対に左脳の古い部分の強い人を入れてバランスをとるのです。そこで新しいレストランを開発するという「新商品開発」のワークショップをやってみたところ、メンバーのすばらしい連携が生まれました。

また、お互いの長所と短所を知ることで、尊重しあいながらワークショップを進めていくことができました。

メンバーは自分に足りないところを知り、チームの力を借りて補完する。リーダーは、チームのバランスをみてメンバーを配置する。スポーツでは当たり前のことを、ビジネスにも取り入れることで、創造性が劇的に上がるのです。

第二回ワークショップポイント!
脳の使い方に、個人個人、偏りがある。
偏りをチーム全体で補完しあうような関係を作る。
結果、創造的なチームができあがる
第三回「他人の視点を取り入れる写真コンテスト」

より創造的なチーム環境を実現するためのワークショップシリーズ「Yebisu Lab<えびすらぼ>」。今回は、チームメンバーの多様性を確認し、それを創造的に活用していくための写真コンテストワークショップを実施しました、与えられた課題は、ドリームアーツ本社近辺で「面白い写真を撮ること。簡単なようで奥の深いワークショップになりました。

視点の違いのよって街が違って見える

今回のワークショップは写真がテーマ。参加者には、いつも使っているデジカメを持参してもらいました。当日、幸いにも天気もよく、写真日和になりました。

ルールは簡単。1時間以内に写真を撮って戻ってくること。撮ってきた写真の中から3枚を選んで発表するということ。スタートの合図とともに、各自、それぞれ、ドリームアーツ本社のある恵比寿の街へと散っていきました。

小山「同じ場所、同じ時間という条件にもかかわらず、みなさんが撮ってくる写真は、まったく違ったものになるはずです。その視点の違いを楽しむのが今回のワークショップのテーマ。自分らしさがでるように、興味がわいたものはどんどん撮ってみてください」

撮影するにあたっては、1つのテクニックを紹介しました。ひとつは、ものを撮影するときに一歩前にでて、「もっと寄る」こと。目では見えていても、写真にとって見ると小さくなってよく見えないことがあります。そういうことのないよう、興味の対象に思い切って寄ること。これにより、より積極的に対象とかかわることができます。

それぞれ持ってきたデジカメで撮影を行う。
創造性を開発するレクリエーションとしても気軽に実施できるワークショップです。

メディアをもつことで情報が入ってくる

1時間たって戻ってきてみると、参加者は一様に充実した表情をしていました。「いつもなら気にならないことが目に飛び込んできた」「撮ってみた写真を眺めていると、どういうことに興味があるのか見えてきた」という感想。ここには、創造性を高めるための重要なポイントがあります。それが、「メディアをもつと情報が入ってくる」ということ。

普通は、情報を持っているからこそ、それをメディア、つまり情報を発信する媒体に載せるという順番で考えます。しかし実はそれは逆。自分のメディアをもつことによって、情報が入ってくるようになる。今回でいえば、写真を発表する場を与えられたからこそ、情報が飛び込んでくるようになるわけです。今まで見過ごしていた面白いことに着目するためには、メディア、つまり発表の場をもつことなのです。大げさなものでなくても、ブログやSNSなども立派なメディアになりえます※8

※8メディアをも読者参加型メディアを手がけてきた橘川幸夫さんの著書「インターネットは儲からない」はおすすめ。そこでなされている「自分のメディアを持つということは、絶えずその白紙の紙面を自分の言葉で埋めることを意識して生活するということだ」という指摘は、インターネット時代には、さらに大きな意味を持ってきます。

他人の視点にアハ!体験する

そしていよいよ発表の時間です。参加者の写真はみごとにバラバラ。「ここどこ?」「どうやって撮ったの?」という質問が飛び交います。写真一枚一枚が、気持ちのいい驚きをもたらしてくれます。そこには、「他人の視点」という、身近でありながらついつい忘れがちな「不思議」があるのです。

アイデアはありふれたもの同士の新しい組み合わせ。そこにはものそのものの新しさではなく、視点の新しさが必要になります。その新しい視点をもたらしてくれるのは、実は他人。異業種のメンバーが集まったワークショップは、それぞれにとっての「新しい視点」が満載でした。

ちなみに投票でトップになった写真は、何気ない親子の様子を捉えた1枚。そこに、撮った人のやさしい気持ちまでみえてくるから不思議です。

発表の様子。プロジェクターで映し出される写真に、全員が見入っています。 最も票を集めたFさんの写真のなかの一枚。
第三回ワークショップポイント!
視点によってものが違って見える
自分のメディアをもつことで情報がはいってくる
他人の視点はアハ!体験をもたらすような驚きに満ちている

多くのビジネスマンが1年の大半の時間を過ごす仕事場。そこでの時間の使い方やアイディアの生み出し方は、ビジネスマンのサバイバル術のようなもの。しかし、それら具体的な技は、仕事のデキル人が経験知として知っていて、あまりオープンにされていないのが実態です。それらをHACKというキーワードで絶妙に表し、日本のビジネスマンにどんどんオープンにしている方。それが小山龍介氏です。

トップダウンの大戦略だけではもはや成功できない現代、現場力を高めるためのソフトウェアを開発するドリーム・アーツは、小山氏の活動に共感を覚え、支援させて頂くことになりました。予測不能な現代ビジネスの中で“楽しく仕事する技”を、ワークショップを通し小山氏と一緒に掘り下げ、そこで発見される様々な技を皆様と共有したいと考えています。少しでもこの連載が皆様の現場力の向上につながれば幸いです。

小山龍介プロフィール

松竹株式会社新規事業プロデューサー。「えびすらぼ」主宰。

1975年、福岡生まれ。京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、現職。サンダーバード経営大学院でMBAを取得。

「歌舞伎美人(http://www.kabuki-bito.jp/)」などの新規事業立ち上げを行っている。ISIS編集学校師範代・代匠。

著書に『IDEA HACKS!』『TIME HACKS!』『ライフハックのつくりかた』。