短期間で大規模「脱Notes」を成功させるプロジェクトの進め方
3,000超の業務DB移行を完遂した「精鋭チーム」に聞く

短期間で大規模「脱Notes」を成功させるプロジェクトの進め方3,000超の業務DB移行を完遂した「精鋭チーム」に聞く
横浜ゴム株式会社

事業内容 タイヤ製品、自動車用部品などの開発および生産、販売
導入規模 約4,000名
利用業務 商品開発や商談に関する情報共有、ワークフローなど
導入時期 2015年12月
TOPICSTOPICS
  • 大規模な業務用DBの移行を、短期間かつ少人数で完遂
  • 使い勝手にくわえ本質的な業務効率の改善が行われた
  • トライアンドエラーを繰り返しながらシステムを育てる
 

約20年間使い続けた情報基盤「 IBM Lotus Notes/Domino」には、約3,000もの移行対象となるDBがあった。 検討の末、効率的に業務改善が可能な基盤(移行先)として、ドリーム・アーツの「SmartDB(スマートデービー)」を採用した。 今回は、限られた期間とプロジェクトメンバーでどのように移行を実現したのか、横浜ゴムと実際にプロジェクトを進めたハマゴムエイコムに聞いた。

Introduction

長い期間にわたって使われ続け、業務に深く根付いた「情報基盤」を刷新するのは、企業にとって、それほど容易ではない決断だ。
情報基盤に蓄積された「データ」と「プロセス」は、すなわち、その企業が保有する「ナレッジ」そのものであり、価値の高い経営資産である。それらを適切な形で新たな基盤へと移せなければ、企業はその資産を自らの手で捨ててしまうことになる。そうした「リスク」をとってまで、移行を進めるべきなのかという不安を前に、計画を前進できない企業も少なくない。しかし、移行が早い段階で行われるほど、企業にとってビジネス上の力強い「武器」となり、将来的に得られるビジネスメリットは、より大きなものになるだろう。
今回、そうした「情報基盤の移行」を決断し、短期間でプロジェクトを成功させた企業として「横浜ゴム」の事例を紹介したい。同社では、約20年にわたって全社で活用してきた「IBM Lotus Notes/Domino」による情報基盤を、ドリーム・アーツの提供する業務プラットフォーム「SmartDB」へと移行した。
特筆すべきは、全社規模で3,000以上にのぼった業務用DBの移行を、約2年という短期間、かつ少人数のメンバーで完遂した点だ。果たして、同社はどのような体制とプロセスで、このプロジェクトに取り組んだのだろうか。

20年間使い込んだ「情報基盤」の刷新を決断した理由

1917年に「横浜電線製造(現、古河電工)」と米「BFグッドリッチ」との合弁会社として設立された「横浜ゴム」。
以来、一世紀の長きにわたり、日本のみならず世界へ向けて、主力のタイヤ、工業用品、スポーツ用品を中心とした、さまざまな商品を送り出してきた。
横浜ゴムでは、1996年前後からNotesによる情報基盤を導入し、メールやグループウェアなどの機能だけでなく、業務アプリケーション環境としても活用されていたという。ただ、今となってはNotesのクライアント/サーバアーキテクチャが重く、時流に遅れたものとなってしまっていて、情報の検索性も低いといったことが社内の問題となっていた。
同社のIT企画部門では、情報基盤の、よりモダンなウェブアーキテクチャへの移行、情報の検索性向上、モバイル環境への柔軟な対応などを目的として、2012年末に「脱Notes」の方針を決定。
経営の了解を得た上で、2013年6月にはNotes上での新規開発をストップし、新たな情報基盤への移行に本格的に着手した。

複数の製品を比較検討した結果、同社が採用したのが「SmartDB」だった。
「いくつかの製品を見比べる中で、われわれが実施したいと思っていた移行プロセスの進め方や、新たに構築したい情報環境のイメージに最もマッチしていると 部内で判断されたのがSmartDBでした。実際にデモを見せていただいた上で『これならば、自分たちの手で作業を進めながら、今あるNotes環境から の移行に対応できる』という意見が多く、これが採用の決め手になりました」「SmartDB」採用に至った理由についてそう語るのは、横浜ゴム、IT企画部企画グループの足立剛志氏だ。

予想以上の困難が立ちはだかった「脱Notes」プロジェクト

「脱Notes」プロジェクトにおいては、当初から既にある「NotesDB」の棚卸しに着手していた。移行以前にNotes上に存在していたデータベースの数は、全体で約3,000にものぼっていたからだ。まずは、Notes のログを参照しながらDBの棚卸しを行い、移行対象となるDBを3,000から500まで絞り込んだという。

その後、さらに各部門へ1年かけてヒアリングを行い、450まで削減。その中から、メールに関するものや文書管理DBの一部など、クラウドやポータルへ移行するものを決定し、残った約300の業務アプリ系 DB を「SmartDB」へと移行する方針を定めた。

「SmartDB」へ移行するDBの数は300へと大幅に絞り込まれたものの、「他システムとの連携が行われているなど、業務プロセスと密接に結びついたNotesアプリについては、実際に移行が可能なのかどうか、当初は不安もあった」と足立氏はいう。というのも、横浜ゴムでは「Notes」を「グループウェア」として使っていただけではなく、その開発基盤としての機能を駆使して作り上げた「業務アプリケーション」を多く活用していたのだ。その中には、商品開発に関する立案書の発行や部門間でのワークフローを行うアプリケーションや、商品設計の審査に関するドキュメント管理のアプリケーション、商談管理データベースといった重要なものが含まれている。こうした「大物データベース」の数は 50 以上にのぼり、これらについても確実に移行していく必要があったのだ。
さらに、当初 2015 年末までのプロジェクト完了が目標とされていたが、業務アプリの移行先として「SmartDB」を採用することを決めたのは 2014年後半のことだった。約1年の短期間で300 の業務アプリを移行する必要があったのである。結果から言えば、当初の目標からはややスライドしたものの、2年で、300に絞られた業務アプリ系DBの 95%以上が「SmartDB」への移行を完了しており、今後の完全移行についても目処がついた状況になっている。

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ポイントは移行プロジェクト「業務部門を巻き込む」こと

今回の移行プロジェクトにおけるチームの体制は、大きく右の図のような形で組織された。
実際の移行作業は、横浜ゴムの情報システム子会社である「ハマゴムエイコム」の 3 人の「フロントチーム」が中心となり、ドリーム・アーツ側のエンジニアから技術面でのサポートを得ながら進めた。この「フロントチーム」には、横浜ゴムにおける各業務部門の「担当者」、およびIT企画部(前出の足立氏が所属)とコミュニケーションをとりながら要件を詰め、開発チームに具体的な作業指示を出すといった任務も与えられていた。ハマゴムエイコム、第二システム事業本部システム開発一部、グループリーダーの黒田嘉章氏は「時間が限られている今回のプロジェクトでは、ユーザー側の協力が必要不可欠でした」と語る。
今回の移行プロジェクトで、「フロントチーム」が要件のヒアリングを行ったユーザー部門は81部門にのぼる。各部門の「担当者」には、フロントチームに対し、移行後のDBに関する要件を部内でとりまとめて伝える責任がある。一方で、クレームや追加の要望については「フロントチーム」に直接申し入れるのではなく、「IT企画部」を通じて伝えるというルールを設け、これを徹底したそうだ。今回のプロジェクトでは、1年という限られた期間内で、既にある必要な機能を、確実にSmartDBへと移行することを最優先の課題としたという。そのため、 追加要件については今後の課題とし、今回のタイミングでは実装しないという割り切りも、一部で行う必要があった。

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精鋭「フロントチーム」が獅子奮迅のプロジェクト進行

今回のプロジェクトにおいて、事業部門の担当者と時に激しいやり取りをしながらも、着実に移行を進めていった、ハマゴムエイコム「フロントチーム」の中心メンバーは、・時田 晶子氏(プロジェクトリーダー、現ハマゴムエイコム人材開発部)・疋田 千景氏(第二システム事業本部システム開発一部)・鵜川 真琴氏(同上)の3名である。彼女たちは実際に、どのようにプロジェクトをマネジメントしていたのだろうか。その一部について、今回話を聞くことができた。「約300の業務アプリを1年ほどでSmartDBに移行することがミッションだと聞かされた時には『本当に終わらせることができるのだろうか?』という不安のほうが大きかったですね」と、プロジェクトリーダーを担当した時田氏はいう。彼女たちの所属するハマゴムエイコムは、横浜ゴムの情報システム子会社として、横浜ゴムグループおよびグループ外企業における情報システムの開発、構築を担当している。ERPを中心とした、各種業務システムのコンサルティング、開発に強みを持つ企業だが、「SmartDB」を用いたNotes移行に関する案件を担当したのは、今回が初めての経験だったという。

プロトタイプを見せながらヒアリングを実施

同社では、移行対象となった300の業務アプリを、移行の難易度別に「A」から「F」までの6ランクに分類。その中からランクの異なる3種類のDBについて、「SmartDB」上でプロトタイプを作成し、移行が行えるかについて検討を行った。担当者に要件をヒアリングする際にも、円滑にとりまとめるためのアイデアを実践していた。「ヒアリングを行う時には、その部門で利用しているNotesDBを実際に開いて みて、それがSmartDB上でどう実現できるかというのを事前に確認しました。あらかじめSmartDBで画面を作り、実際にユーザーに見せ、相談するようにしました。もし、Notesと同じ動作が実現できない場合でも、代替案を示すことで納得していただけるケースが多かったです」(疋田氏)

業務プロセスを見直すことで触発された「本質的な業務改善」

業務部門の担当者を巻き込んだ形での要件のとりまとめは、副次的な効果も生んだという。業務アプリ内で行われている処理は、各事業部門における「業務プロセス」そのものを表している。今回の「SmartDB」への移行にあたって、各事業部門が日ごろシステム上で行っている業務を見直す機会が生まれたことで、日常業務に含まれていた「無駄」を見つけ出し、より「効率的」な進め方を考えるきっかけにもなったという。「あらためて、業務アプリで行われていた処理の内容やプロセスを、ひとつずつユーザーに確認してみると『そのプロセスはいらない』、『現場ではこのようにしたほうが効率的』といった意見が主体的に出てくることも多かったのです。今回、情報基盤の移行を行ったことで、単純な使い勝手の向上だけではなく、より本質的に業務効率の改善が行われた部分もあったのではないでしょうか」(黒田氏)

カスタマイズが簡単だから…チーム内でのタスク管理にも「SmartDB」を駆使

フロントチームでは、このプロジェクトのタスク管理そのものに「SmartDB」を活用しており、メンバーは、それぞれに「SmartDB」の「カスタマイズの容易さ」をメリットとして挙げた。「チームのメンバー全員がSmartDBでの開発方法について理解していたこともあり、情報共有やタスク管理でより良い改善点を思いついたら、すぐに反映させることができた点が良かったです。誰かが作ったバインダ(DB)が、別の誰かの手で改良され、次にアクセスする時には機能が増えているといったこともありました。トライアル&エラーを繰り返しながらシステムを育てることができるツールだと思いました」(疋田氏)

また、移行プロジェクトを進める中で技術的な壁に突き当たった際には、ドリーム・アーツのサポート部隊による支援も積極的に活用した。「実現したい機能が自分たちの力で作れない時には、ドリーム・アーツに『どうすればできますか?』と相談していました。その都度、親身になってさまざまなアイデアやアドバイスを提供してもらえたことには感謝しています。でも、あまりに頻繁に問い合わせてしまったので、サポート担当の方には嫌われてしまったかもしれないですね(笑)」(鵜川氏)

「SmartDB」を「これからの100年」を支える情報基盤とするために

2012 年にスタートした、横浜ゴムの大規模な「脱Notes」プロジェクトは、2016年末の段階でほぼ完了した。今後については、ユーザーの利用状況を見ながら、部門ごとの独自開発なども可能にしていきたいと考えているそうだ。例えば、新しい申請ワークフローや部門独自の文書管理DBなどについては、ある程度全社的にコントロールをしながら、ユーザーの自由が利く環境があることで、より活発な情報共有や、自主的な 業務改善を実現するという。また、ハマゴムエイコムでは「SmartDB」を活用した今回のNotes移行プロジェクトが成功事例として社内的に高く評価され、プロジェクトの進め方に関する ノウハウを報告会で共有するといったことも行われているそうだ。「今回のプロジェクトのようにNotes移行をしていくにあたって、このツールを活用していきたいというニーズはほかにもあるだろうと思います。他社での事例も含めて、Notesの機能をSmartDBで実現したい際にはどうすればいいかといったノウハウを、ユーザー間で共有できるような機会や、FAQを集約した場があるとうれしいですね」(黒田氏)横浜ゴムでは、これから長期にわたって同社の業務を支える情報基盤となるであろう「SmartDB」に大きな期待をかけている。

「ドリーム・アーツには、今回のプロジェクトにあたって、われわれのさまざまな要望に対し日本企業らしく、真面目に対応してくれた点で感謝しています。またSmartDBへの移行を進める中で、われわれ自身も従来の業務プロセスを見直し、効率化について考える貴重な機会を得たと感じています。これから将来にわたって、SmartDBが横浜ゴムのビジネスを支え、さらなる業務改善やイノベーションを生みだす基盤として発展し続けてくれること願っています」(足立氏)

横浜ゴムは今年で100周年を迎える。 グローバルで技術開発情報を共有し、シームレスな体制を整えて、今後の100年を支える基盤として「SmartDB」が期待されている。

SmartDBはNotes移行の切り札

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※所属部署、役職、インタビュー内容は取材当時のものです。

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