独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)様

グループ3500名の情報共有基盤をINSUITE®で構築

JAXA
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
設立年
2003年10月1日

宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行い、安全で豊かな社会の実現に貢献すべく、さまざまな研究開発に挑んでいます。

導入概要
導入時期
2008年4月
導入期間
6ヶ月
利用規模
4,000CL
導入のポイント
  • 個別最適からよりよい情報共有、スタイルへ転換
  • 権限委譲で機密情報を適切に管理
  • 講習会で運用ルールの浸透と利用促進を達成

独立行政法人宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、2003年10月1日、宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、宇宙開発事業団(NASDA)の3つの組織が統合して誕生した。「空へ挑み、宇宙を拓く」というコーポレートメッセージのもと、宇宙・航空が持つ大きな可能性を追求し、日本の宇宙航空分野における技術の粋を結集した最先端の研究開発に挑んでいる。2010年6月の小惑星探査機「はやぶさ」帰還のニュースは大きくメディアで報じられ、日本の宇宙開発技術力の高さを再認識した方も多いのではないだろうか。

そのJAXAでは社内の情報共有基盤としてINSUITE®Enterprise(以下INSUITE®)を2008年から導入し、『JAXAポータル』として、調布の本社をはじめ、つくばや種子島の宇宙センターなど全国の事業所・施設全てで利用している。最先端の研究に関する情報など、機密性・専門性が極めて高い情報を扱うJAXAで、INSUITE®はどのように活用されているのだろうか。

改めて製品の選定、構築から利用までの経緯について、情報システム部情報システムグループ多賀正敏氏にお話を伺った。

JAXAつくば宇宙センター

導入背景/課題

JAXAでは、2003年の発足直後に導入したグループウェアの陳腐化が進んでいた。また、当時のグループウェアの機能が十分ではなかったため各部署が独自にグループウェアを導入し、個別最適が進んだ状態になっていた。そこで、グループウェアの入れ替えを機に、全社統一となる新しいシステムへの検討を始めた。

全社的にスケジュールや情報を共有したいというのが目的の一つでした。その上で、社内のいろいろな連絡をどうやってスムーズに、最適な形にできるかという課題を社内的に議論した結果、より機能が豊富なグループウェアが必要という結論になりました。

組織内の様々な情報のなかから、共有が必要なものはいかにスムーズに共有し、かつ、共有できないものはいかにセキュアに管理するのか。社内で議論した結果、それらの細かい統制が実現でき、かつ今まで個別にシステム化してきた機能も取り込めるようなグループウェアが必要だという結論になったという。

また、JAXAには多様な人が携わる研究機関ならではの課題もあった。

我々は協力会社と呼んでいますが、ロケットや衛星などのメーカーの方が社内でスタッフと共に仕事をしており、大勢の協力会社の方々もグループウェアを使って情報を共有する必要がありました。そのような要求がある一方、もちろん協力会社の方には開示できない情報もある。情報の切り分けや管理は、ルールや運用面で制御する必要性も感じていました。

製品選定

このような課題の解決を念頭に置き、仕様書に基づく一般競争入札を行った結果、新情報共有基盤としてINSUITE®を導入することになった。JAXAが新情報基盤で実現したかったことについて伺った。

ポータルを利用する際、個人ごとにポートレットをいろいろ組み合わせて自由に配置できることが要望の一つでした。その要望にINSUITE®があてはまっていました。

同じ分野の研究であっても、役割によってやるべきタスクが大きく違う。当然、必要とする情報も違ってくる。INSUITE®のポータルは、全社共通のものから部署、プロジェクトごとなど、目的別に構築することが可能だ。もちろん、自分に必要な情報だけを集約した個人のポータルを作成することもできる。しかも、ポータルに配置するポートレットはノンプログラミングで簡単に作成できるため、開発知識がない部門の管理者でも設定・追加でき、情報を一目で確認できる自分専用のポータルを作成することができる。

また、出張が多いことからWEBメール利用の要望もあった。通常の業務ではクライアントメールを利用しているのだが、出張先に設置してあるPCを利用する場合クライアントメールが使えないため、別途導入していたWEBメールソフトを利用していた。新システムでは、WEBメールの機能も取り込みたいと考えていた。現在は、「出張先ではINSUITE®のAjaxメーラーを推奨している」(多賀氏)という。使い易くなったと評判も上々のようだ。

さらに、日々の業務を円滑にするために必要な要望もあったという。

稟議決済システムにRSSリーダー※1を利用したいと思っていました。稟議の申請が回ってきたときに、ポータル上で『あなたの承認が必要な申請が回ってきていますよ』と教えてくれるものです。

JAXA内では予算実施や文書決裁などの際に必ず稟議申請をしており、JAXA全体では常に相当な数の申請がなされている。稟議決済システムをポートレットとして切り出してINSUITE®のポータル上に表示することも可能だが、それだけでは、承認する側からは自分のところに申請が回ってきているのかがわかりづらく、見落としや承認もれが発生するおそれがある。そこで、INSUITE®のRSSリーダー機能を利用して申請の新着情報を表示させるポートレットを作成した。これを見れば申請が届いていることがタイムリーに確認できるため、見落としを防ぐことができ、申請から承認、決済終了までの一連の業務のスピードを向上させることができる。

※1 RSSリーダー…登録した社内外のサイトや他システムの更新情報を取得し、タイトルを一覧表示する機能。複数システムの新着情報を一括で確認できるほか、概要の把握も同時に出来るため、効率的な情報収集が可能となる。

活用方法

運用に関しては、多拠点かつ機密情報を扱う組織ならではの工夫があった。

情報システム部門では全社で利用するJAXAポータルの運用管理を行い、それ以外の部分は部署ごとに管理権限を委譲して運用管理を任せています。各部署から全社に通知する情報についても、情報システム部門で制御することはなく、部署ごとの判断にまかせています。全社的に共有できる情報はある程度決まっていますが、それ以上の機密性の高い情報は、セキュリティの方針に従って各部署で管理しています。
JAXAシステム管理方法

組織内での情報系システムの管理は、おおまかに①集中管理型、②分散管理型に分かれる(図参照)。①集中管理型は、人・組織の変更からコンテンツ全般の管理まですべてを本社のシステム部門が掌握するため、全社的な情報の統制がとりやすいがシステム部門の負荷が非常に高くなる。②分散管理型は、システム全般の保守・点検を本社が担い、それ以外は各拠点が管理をするため、負荷が分散され柔軟な運用が可能になる反面、本社からの統制はとりづらくなる。INSUITE®では、さまざまな管理権限を集約または委譲することができるため、どちらの管理方法にも柔軟に対応が可能だ。企業では、その組織の特性や情報統制の方針などに照らし合わせて、どちらかの型もしくは混合型の管理方法を選択している。

JAXAの場合は②分散管理型を選択し、各部署の担当者によるきめ細やかな権限管理により、機密情報の漏洩リスクを極力抑えつつ管理負荷を分散することを実現している。

導入推進

導入にあたり、JAXAでは事業所ごとに講習会を実施したという。新システムへの移行による混乱を防ぎ、活用を促進するためだ。情報リテラシーが高いスタッフが多いため操作に慣れるのは早いと思われるが、機密情報管理の観点から、運用のルールを周知徹底する必要がある。そこで、マニュアルを用意するなど時間をかけて丁寧に準備を進めた。

講習会では、けっこう時間をかけて説明しました。遠隔地の事業所にはテレビ会議なども使いましたね。さらに、部署ごとに導入したグループウェアの集約にも地道に取り組みました。INSUITE®に乗り換えた時の使い方の違いについて情報システム部が相談に乗ったり、データを移行するためのツールを提供したりするなど、全スタッフにJAXAポータルを利用してもらうよう努力を重ねてきています。

JAXAポータルには、業務連絡を掲載するポートレット(他システムと連携)など、必ず見て欲しい情報が集約されている。全スタッフに利用を徹底させるためには、新システムへの移行をスムーズにする工夫のほかに、利便性を啓蒙することも必要だった。徹底したフォローの結果、「必ず全員使うことは、意思統一できている」(多賀氏)という。

今後も、INSUITE®がJAXA内の情報共有を支え、科学技術の発展の一助となることを期待したい。