DX CAMP 2021 zero -for Enterprise- 開催レポート

2021年8月24日(火)、Sansan Eight主催で大企業の経営者・役員・部長職以上を対象にしたオンラインイベント「DX CAMP 2021 zero -for Enterprise-」が開催されました。
DX CAMPは日本を代表する企業・部門のリーダーたちが、DXの本質や実現に至るノウハウを短期集中で学び、真のDXリーダーへと成長する場です。
このDX CAMPにてドリーム・アーツ 代表取締役社長 山本が、株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長 冨山和彦氏、東京大学 未来ビジョン研究センター 西山圭太氏と共に「DX」をテーマに3者で対談を行いました。大企業の部長以上という限定オンラインイベントであったにも関わらず当日のリアルタイム視聴者は300名以上。
好評いただいたこちらの3者対談(45分間)の様子をレポートいたします。


DXの思考法 今回の3者対談のきっかけとなった書籍
「DXの思考法」

3者対談のタイトルは「DX(デジタルトランスフォーメーション)/CX(コーポレートトランスフォーメーション)これからの10年」。
冒頭、先日出版された書籍「DXの思考法」(西山圭太氏 著、冨山和彦氏 解説)の紹介から。
今回の3者対談は、この書籍の出版がきっかけだった。

「DXの思考法」(西山圭太氏 著、冨山和彦氏 解説)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163913599

本気の2割がDXをリードする

まず「経営者はしっかりとDXを理解しているのか?そして本気度はいかほどのものか?」という話題から。冨山氏によれば、経団連の企業で見ると「本気で理解し本気で実行している人は2割、理解できない人が2割、中間層は6割」だという。
「2割の人にしっかりと覚悟あれば、それをもとに全体が動きそうだ」と山本。
西山氏の感覚は、「このままではまずいという危機感」は経営層から感じているが、自分の危機感を言葉にしてアクションし始めている人とそうでない人に分かれているという。楽観的に捉えれば、どんな新しいことにもまずは「フロントランナー」が必要で(皆で一斉にスタートはない)、その人たちが正しい道を歩めばそのあと8割の人は続いてくるだろう。日本はそこからが早い、と述べた。

(株)ドリーム・アーツ代表取締役社長 山本 孝昭 (株)ドリーム・アーツ 代表取締役社長
山本 孝昭

「DX」のバズワード化を追い風に。ただし本質を忘れるな

「DX」がバズワード化してはいるが、これは世の中に対して応援メッセージになっている、と山本。冨山氏も、バズワード化することで追い風になっていると賛同。しかし、本質を捉えずに「なんちゃってDX」や「DXごっこ」に走り「やったつもり」になっている危険性もあると指摘する。
「ハンコをなくすこと」はDXの本質ではなく、「(それがきっかけにはなるかもしれないが)産業構造が変わった時にどうするのか」が本当の問いであり、DXを単なるバズワードとして終わらせず、本質的なところまでたどり着けるかどうかが日本の経営者に問われていると冨山氏は述べた。

冨山 和彦氏 (株)経営共創基盤(IGPI) IGPIグループ会長
冨山 和彦 氏

レイヤー構造を活かすとはある種の「解放」

次に、書籍「DXの思考法」のなかでも重要なキーワードである「レイヤー構造」についての議論に入る。日本企業はレイヤー構造のなかでしっかりと存在感を出せるのか、について。おいしいレイヤーをGAFAなどのグローバル企業に全て取られてしまい、おいしいとは言い難いレイヤーに日本企業は押し込められてしまう危機感があるが、その辺りはどうか、と山本からの問い。
各社はレイヤー構造の中で存在感を出せるような新しいビジネスモデル=DX/CXを主体的に進めていかねばならない。本気で取り組まなければ稼げない産業しか残らなくなってしまう」と冨山氏。

西山氏は、皆が「目の前の摩擦を恐れている」ことに危機感を持つ。自分の領域と相手の領域は別物だから口を出せないなど、遠慮して避ける傾向にあるのではないかということだ。
レイヤー構造を活かすことは、ある種の“解放”である」と西山氏は続ける。
今まで個々の領域に閉じていた世界から、自らを解放し、それぞれの領域同士が行き来する。隣の人の領域を犯すということではなく、それぞれが持つ強みを融合させるレイヤー構造は楽しさや面白さにもつながるという。

西山 圭太氏 東京大学 未来ビジョン研究センター 客員教授
西山 圭太 氏

本質的なDX実現のために思考法・発想を変えよ

特に大企業ではITとデジタルの話になった途端に「人ごと」「人任せ」になる、と山本は指摘する。社内であれば情報システム部門へ、社外であればSIer(システムインテグレーター)、外部ベンダー任せに。SIerはピラミッド階層の安定したパラダイムで今まで十分に生き残ってきたが、これから水平レイヤー構造に変化した途端苦しい展開になるのでは、と山本は続ける。冨山氏は、「当たり前のようにデジタルを使いこなす若者は、そのようなオールドモデルの企業へは就職しないのではないか」と重ねる。密かにインテリジェンスの再配置は始まっているとのこと。

そして、今回の議論の大きなポイントとなるDXの本質につながる「思考法・発想の転換」へ、議論は展開。

デジタルに関して外部の人任せになっているということは、各社はデジタルをビジネスにうまく利用するという「デジタル・リテラシー」が足りていないのではないか、と山本はさらに指摘する。
では「デジタル・リテラシーがある」とはどういうことか。
決してデジタルの難しい知識を得ることではなく、思考法・発想を変えることが重要であると西山氏はいう。個人の生活では普通にデジタルを使いこなしているのに、ビジネスの世界に入った途端に「そのように考えてはいけないのだ」と自分で枠を狭めているように感じる。
普段の発想を仕事に持ち込んで「できる」と言う意識を持てるかどうかが大事で、ユーザーにオポチュニティが回ってきていると述べ、冨山氏・山本も深く頷く。

テクノロジーが進化して、誰もがデジタルの力を享受でき、ユーザーエクスペリエンスが議論されるなど、どのように価値が提供されるのか本質的なところに近づいてきていると山本は重ねる。タイミングとしては日本にも大きなチャンスが巡ってきている、と冨山氏もさらに重ねつつも、しかし、高度経済成長を支えてきた昭和的な人が考える「具体」の発想に落ちてしまうとことは注意しなければならないと警笛を鳴らす。

問われる「抽象化能力」

そうすると何が大事になるか。「これからはさらに“抽象化能力”が問われる」と冨山氏。
IT・デジタルをビジネスで活かすために、「まずプログラミング言語(例えばPython)を覚えなければならない」と“具体”から入るなど、全ての構成要素を自分で身につけなければならないと思っている人が多いことは嘆かわしいと冨山氏は続ける。
西山氏は、今こそ自社のビジネスの本質「そもそも論」を問うときであるという。
「デジタル化をする」ということは大きく言えば「面倒なことはコンピュータに任せて、人間は楽に生きよう、そして本当に大事なことだけやろう」ということ。細かいことを全て自分で考えるのではなく、具体のところは別に任せて自分たちは大枠を把握しておく。それがレイヤー構造の活かし方であると西山氏は続けた。
今までのやり方とあまりにも感覚が異なるため、その転換に気付けない人も多いのでは、と山本。それに対し「抽象化能力」が持てずそれを認識できないのであればリーダーは交代するべきであると冨山氏。もしコーポレートトランスフォーメーションを本気でするならば、「誰をリーダーにするか」が大きなポイントになる、と続けた。
仮に、いろいろな制約がある中で最適値を探すような微分型・因数分解型の要素の方をトップにしてしまうと、制約が取り払われ解放された世界では、途端に迷走する危険性が生まれると指摘した。

問われる「抽象化能力」

DXを推進するための新憲法と現場への発想転換浸透

議論はDXを実行する「組織能力」へシフトし、いよいよクライマックスへ。
リーダーの話が出たが、たとえその人にリーダーシップがあったとしても、実行する現場=組織能力がないと前に進まないという現実もある。リーダーだけがDX/CXを理解するだけでは不十分で、トランスフォーメーションを実現させるための「新憲法」を構成員である社員がしっかりと理解し身につけることが重要だ、と山本。その憲法改正がリーダーの重要な仕事であると冨山氏は重ねる。
DXに成功している企業は組織能力を上げるために、相当「評価制度・人事体系」を根本から変革したという。
最近、組織能力を上げるために、情報システム部門以外の業務担当者(非IT人材)が自ら業務をデジタル化する「デジタルの民主化」の流れが来ている=現場の業務担当者が自らデジタルを活用しようと立ち上がり始めており、DXを本質的に推進するための土壌づくりとして有効だと感じる、と山本はいう。その流れを活性化させるためには、自ら立ち上がる人を評価・応援するような制度が大事になると冨山氏。
ここがDXできるかどうかの大きなポイントとなり、3者の議論はさらに盛り上がる。
スポーツに例えるなら「野球」から「サッカー」に変わってしまうほどの変化のなか、現場の軋轢は必ず起こるので、相当シビアな経営判断も出てくるだろうと続ける。サッカーを野球のようにやりだす人が出てくる懸念を示す西山氏。テクノロジー的にデジタルかどうかではなく、「発想の違い」で判断・評価できるようにしなければ悪意なく議論が混乱し、正しい道を阻む恐れがあると西山氏は続ける。
したがって、ルールが根本的に変わるとき、現場は相当混乱するので、不連続な変化を起こす際はトップマネジメントの介入は必須だと冨山氏は重ねた。
さらに西山氏は、ネットフリックスのカルチャーを例にして、DXを推進する際に、「DX」の認識だけでなく「DXではないもの」についての共通認識を持つことも大事だと付け加えた。発想を大きく変換する際は同床異夢にならないようにこのアプローチは重要であるということだ。

DXを推進するための新憲法と現場への発想転換浸透

次期DXリーダーへのメッセージ

最後に、大企業の次期経営層に対して、今後のDXを推進するためのポイント・心構えはあるかという山本の問いに対し、「多様性・流動性があることが前提。健全な新陳代謝が必要(離職率5-10%)である」と冨山氏は答えた。退職した人がまた別のタイミングで戻ってくることも多く、人事制度や考え方を180度変えないといけないとのこと。
さらに、「DXを含めて、大きな非連続なことをする際は社内だけではできない。社外をも巻き込んでやらないとコトを起こせない時代にある」と西山氏。
所属の意識や意義が相当変わりそうだと山本。イノベーションは新結合であり、既存にあるものの組み合わせで価値が生まれる。本質的にオープンであることが非常に大事だと重ねる。一つの会社の中だけで積み上げているスキルは価値がなくなってしまう。若い人にはそのつもりで準備して欲しいと冨山氏。

コロナ禍が無事に明けたらさらに新しいビジネスの動きが出てくるだろう。大転換期であり、こんな面白い時代はない、と全員が賛同。若い次期経営層に対する応援のメッセージで締めくくった。
DXに関して本質的な議論が繰り広げられたあっという間の45分間。視聴者からのリアルタイムでのリアクションも多く大盛況のうちに幕を閉じた。

次期DXリーダーへのメッセージ

参加者からの声

  • トップに聴かせたい内容であった。
  • デジタルのテクニカルな話より、DX推進のための気構えや目的がテーマであったことに好感がもてた。
    (なかなか他のセミナーではこの手の話は聞けない)
  • DXの考えをそれぞれの業態の方から聞くことができ有効だった。レイヤ思考については深堀りしたい
  • 企業の実態を踏まえながらも進むべき方向性に向かっている人に勇気を与えてくれる内容でした。
  • 参加されていない企業も含め広く日本の産業界に公開すべきと思います。
  • 理解していたDXの内容では不十分だと思い知らされた
  • DXは、デジタル化ではなくて、業務改革というTrasnformationが先にありきというメッセージが、非常に印象的でした。ややもするとデジタル化がDXと言う人が沢山いる中で、非常に強いメッセージだったと思います。
  • デジタル技術の導入よりも、考え方をアップデートすることの重要性が分かった。

大企業のヤバいDX認識 緊急調査実施!

大企業のヤバいDX認識 ホワイトペーパー

バズワード化する「DX」だが、社内外で議論するなかで、さまざまな疑問点が浮かび上がってきた。企業は正しく理解・認識しているのだろうか。経営層は危機感を持ってDXを推進しているのか?本気度はどのくらいか?そしてそれは、中間管理職やその先の現場までしっかりと伝わっているのだろうか。
そこで今回、大企業の管理職1,000名へ“DX/デジタル化”に関する調査を実施した。
その結果、根本的な問題点が浮かび上がるも、いくつか明るい兆しも見えてきた。本ホワイトペーパーでは調査結果に考察を加え、大企業がDXに取り組む際の重要ポイントを探る。

大企業の管理職1,000名に聞いた
“DX/デジタル化”に関する調査

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